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パレスチナ住民の生活を支えるビットコイン

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update 2021.08.31 15:22
パレスチナ住民の生活を支えるビットコイン

update 2021.08.31 15:22

戦況化の裏で市民のライフラインとしての利用が広がる

常に紛争に見舞われてきたパレスチナでは、仮想通貨に対する需要が高まっており、ビットコインがパレスチナ人の生活を支えるライフラインになっていることが明らかにされた。

パレスチナのガザ地区の金融アナリストであるAhmed Ismail氏は、ガザ地区とヨルダン川西岸地区には、非公式の仮想通貨取引所が20社以上存在しており、地域住民の間でビットコインが日々の生活を支えるライフラインとして有効活用されていることを報告している。

住民達はビットコインを外国株の購入やその他の海外投資、海外オンラインサービスへの支払いを行う手立てとして利用しており、Ismali氏自身も30以上の顧客の取引をサポートしたことを明かしている。また、ある仮想通貨ディーラーは、過去4年間にわたり、ガザ地区の50世帯の家庭の、オンラインショッピングや海外送金を目的とした月平均500ドル程のビットコインの購入をサポートをしているという。パレスチナでは、国内の銀行が十分に機能していないことから、銀行サービスの代替として、安全且つ迅速という特性を持つビットコインが市民権を得ているようだ。

パレスチナは現在、イスラエルとの戦争の真っ只中にあり、海外市場へのアクセスが制限されている。そのため、銀行サービスを介さずに個人間同士で直接取引が可能となるP2Pサービスを活用したビットコイン取引は透明性が高く、仲介業者となる金融機関から送金を拒否されることもないため、住民にとって重宝される存在となっている。特にイスラエルと親密な関係を持つ西側諸国の銀行などを介さず海外のサービスを利用できる点は、実用的と言える。

一般的に仮想通貨は、政治的・経済的に孤立している地域で利用される傾向にあり、パレスチナも同様の状況ではあるものの、同国内でのビットコイン需要の高まりは、他国とは理由が大きく異なるようである。最近大きな注目を集めた、ベネズエラやイラン、トルコなどは、国内法定通貨のハイパーインフレが引き金となり、仮想通貨の需要を高めているが、パレスチナでは、世界経済へアクセスするための手段として仮想通貨を利用する傾向にある。

ヨルダン川西岸地区の非営利団体、Techno Parkを経営するLaith Kassis氏は、パレスチナの状況について以下のようにコメントしている。

パレスチナには、経営者が海外から支払いを受け取るPayPalのような決済代行会社が存在しません。そこで、個人のPCなどで行われる専有ノード環境の決済システムとして、ブロックチェーンが解決策となっているのです。

Laith Kassis, CEO at Techno Park - Coindeskより引用

パレスチナ住民に光明をもたらしているビットコインだが、決して問題がないわけではない。国内の仮想通貨取引所は無認可のため、新シャケルやアメリカドル、ヨルダンディナールなどの法定通貨を国内の銀行から取引所に送金することができず、利用者はビットコインの入手や法定通貨への両替を地域の仮想通貨販売業者に頼りきっている。ガザ地区の仮想通貨販売所では、急激なビットコイン価格の上昇に耐えられず、時価より不利なレートでビットコインを両替させられるケースなども発生しているという。

The Bitcoin Standardの著者Saifdean Ammous氏はパレスチナ出身で、Lebanese American University経済学部の教授を務めており、現在の自国の状況を以下のようにコメントしている。

ビットコインによるトランザクションは、両者がビットコインを保有していなければ、それは単にビットコインと法定通貨を両替する手間を増やすだけにすぎません。これでは、根本的な解決にはなり得ません。

Saifdean Ammous, Author - Coindeskより引用

Ammous氏の見解では、この状況を作り出しているのは、パレスチナ通貨局【Palestine Monetary Authority、以下PMAと称す】が、ビットコインを既存通貨を補完する決済ソリューションと捉えている点にも原因があるという。同氏は、ビットコインはあくまでも、独立した金融システムと決済ソリューションとして取り扱うべきだと唱えており、パレスチナ通貨局が、独自の仮想通貨を発行する計画を公表している[1]ことに関して消極的な見解を示している。

パレスチナ住民の生活は、高い失業率と貧困率によって切迫な状況となっており、コミュニティ内での信頼関係と日銭を消費することで成り立っている。世界銀行によると、パレスチナ住民の21%は1日あたり5.5ドル以下しか消費できず貧困ラインの生活をしているという。このような状況で、値動きが激しく現金化しにくい仮想通貨は、海外への支払いとして利用価値があるかもしれないが、国内での取引手段には適さないという指摘もある。

しかしながら、テック業界ではこの仮想通貨の広がりをポジティブに捉え、PMAへ働きかける動きもある。Techno Park代表のKassiss氏は、9月の第1週目に初となるブロックチェーン勉強会を実施し、学生や起業家、政府関係者など29名が参加した。5日間に渡るプログラム終了後には、すでにブロックチェーンを利用した新しいアプリケーションの開発に着手する者も現れるほど、仮想通貨に対する関心は非常に高いことが伺える。

ブロックチェーンやP2Pといった新しいテクノロジーが、今後のパレスチナの経済を大きく変える起爆剤となるかもしれない。

release date 2018.9.19

出典元:

ニュースコメント

各国で仮想通貨の取引禁止が進むなか、投資家たちの間で利用されるP2P取引

各国で仮想通貨取引に対する規制が強化される中、銀行サービスを介さず個人間で直接仮想通貨の取引が可能となるP2Pが投資家たちの間で利用が広がりつつある。 世界的に見ると、P2P取引を仮想通貨取引の主要手段としている国もある。例えば、中国では、120箇所以上の海外の仮想通貨取引所を対象に、国内からの大規模なアクセスをブロックするなど規制への強気な姿勢をみせているが、これに対し、投資家たちはVPN経由による仮想通貨取引を継続している。またインドでは、インド準備銀行(RBI)がインドルピーによる入出金を禁止しているが、個人間の仮想通貨取引については規制の対象としていないことから、RBI規制の回避に向け、P2P取引で運営を行う取引所が続々と現れている。今後もP2Pを介した取引手法が広がっていくことが予想される中、規制当局や中央銀行がこれに対しどう対応していくのか注目していきたい。


Date

作成日

2018.09.19

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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