作成日
:2018.09.18
2021.08.31 15:22
日本金融庁(Japan Financial Services Agency, JFSA)は、今月12日に開催された第5回仮想通貨交換事業等に関する研究会
で、みなし登録業者の登録申請状況と今後の新規仮想通貨事業者の受け入れ体制についての議論を行った。金融庁は、営業が暫定的に認められていた仮想通貨取引所である通称みなし業者を対象に行った監査の結果を共有
しており、現在16社あるみなし業者のうち、監査をクリアできたのは3社のみであったことが報告された。これまで当局は、新規事業者に厳しい対応を示しており、今回の報告でも16社中1社を登録拒否とし、12社の登録申請を差し戻している。審査中のステータスとなるのは、コインチェック株式会社【以下、コインチェックと称す】、株式会社Lastroots、みんなのビットコイン株式会社の3社で、順次金融庁による立入検査が実施される計画だ。また当局は、NEM流出事件後に提出されたコインチェックの業務改善計画書を審査中であることも強調した。現在、日本での新規参入の意向を示している仮想通貨事業者は160社以上存在することがわかっており、これに対して当局は、30人の職員で仮想通貨取引所やトレーダーの監視、未登録の取引所の監督、登録申請の手続きの処理などの全てを行っている。しかし、拡大する市場の対応にリソース不足が懸念されているため、金融庁は2019年度から仮想通貨市場専任の人員を12人増員することで対応を強化する方針を示した。
今回の会議では、併せて日本仮想通貨交換業協会【以下、JVCEAと称す】が提案する自己規制ルールについても議論されている。JVCEAは、金融庁に認可された16社の仮想通貨事業者で構成される組織で、株式会社マネーパートナーズの代表取締役社長である奥山氏が会長を務めている。
提案された自己規制ルールでは、取引所が新規仮想通貨を取扱う際にJVCEAの認可が事前に必要になり、投資家保護などの観点からJVCEAが異議を唱えた場合は取り扱いが不可になる。これに加え、仮想通貨による証拠金取引の資金決済法や金融庁のガイドラインに準拠したコンプライアンス強化のルール化も訴えられている。JVCEAが提唱する仮想通貨取引におけるレバレッジ上限は4倍だが、特別な状況下においては、取引所が自由に設定できるようになっているという。このような証拠金取引の自主規制ルールは、投資家を想定外のリスクや過度な投機行動から守る手段になるとJVCEAは考えている。また自主規制ルールは、AMLやCFT(テロ資金供与対策)、反社会勢力への対策までにも及んでいるようだ。
いくつかのルールは施行までに時間がかかることが予測されているものの、JVCEAは早い段階での自主規制ルールの適応を目指すことを表明している。
release date 2018.9.18
JVCEAは、2018年4月に発足した民間団体であり、1月に発生したコインチェックのNEM流出事件を受け、仮想通貨の社会的信用の回復や、仮想通貨の取り扱いに関する規定を整備することを目的として設立された。8月には、投資家を保護し率先して自主規制などのルール作成を行っていくべく、金融庁へ自主規制団体としての認定許可を求める申請を行っている。 この度の会議で最も注目すべき部分は、現在上限が無制限であるレバレッジを4倍までに制限するという提唱だろう。仮想通貨市場は価格の乱高下が激しく、投機性は高いものの投資家が多額の損失を抱えるリスクが懸念されていた。このレバレッジ上限の引き下げは、FX同様に海外市場と比較した場合において依然として保守的な意向であることが伺えるものの、日本は世界に先駆けビットコインを通貨として認めるなど、これまで仮想通貨に対して比較的寛容な態度をとっており、規制を整備することでより健全で透明性の高い市場を目指していると考えられる。
作成日
:2018.09.18
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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