作成日
:2018.01.28
2021.08.31 15:23
1月26日、日本の大手仮想通貨取引所であるコインチェックは、ハッキングにより5億2300万XEM(NEM,ネム)が不正流出し、日本円にしておよそ580億円相当が盗まれたことを明らかにした。
コインチェックによると、この度のハッキング被害はセキュリティ対策が不十分であったことが要因であり、NEM以外の仮想通貨に関してはネットワークから隔離された環境で秘密鍵を保存した「コールドウォレット」で管理していたものの、NEMに関してはネットワークに接続された安全性の低い「ホットウォレット」で管理していた上に、マルチシグも実装していなかったことから、NEMのウォレットの秘密鍵だけがハッキングの被害を受け不正流出につながったという。
マルチシグとは、秘密鍵が一つではなく複数に分割することで、アクセスに一定数以上の鍵を合わせることが必要となり、セキュリティを高めることができる技術である。
コインチェックは、NEMを保有していた顧客に対し、自己資金での払い戻し補償を行うことを発表しているが、手続き方法や補償時期に関しては検討中だとしている。
現在、コインチェックは、ビットコインを除く全ての通貨の入金や出金、取引サービスを一時停止している。
NEMは、時価総額90億ドルを超える、時価総額トップ10に入るメジャーな仮想通貨であり、シンガポールに拠点をおくNEM財団によって管理されている。完全なP2Pネットワークであり、決済、資産作成、ネーミングシステムやメッセージングなどのサービスを提供しているほか、優れたコアブロックチェーン技術を備えており、今後さらに多くの機能の提供が予定されている。
今回のハッキングに関し、NEM財団の代表であるLon Wong氏は次のようにコメントしている。
NEMには技術的な欠陥はなく、本質的な価値にも全く影響がありません。また、我々はハードフォークも行いません。我々は、全ての取引所に対し、セキュリティ機能の1つであるマルチシングを推奨してきましたが、コインチェックはその機能を使用していませんでした。セキュリティ対策の甘さが、今回のハッキング被害を引き起こしたと言えるでしょう。
Lon Wong, President of NEM.io Foundation
昨今、ハッキング被害は世界中で頻発しているが、この度の事件では、コインチェックとNEM財団両社の迅速な対応が際立っており、この点においては賞賛すべきであろう。
コインチェックは、ハッキング被害が発覚後速やかに取引を停止し、金融庁ならびに警視庁へ報告した上で記者会見を開いている。また、NEM財団は、今回の事件発覚から数日足らずで、盗まれた通貨にタグをつけるシステムを開発し追跡を開始しており、流出した通貨の取引が行われないよう各取引所にも協力を要請しているという。
NEMの時価総額は、コインチェックのハッキング被害が発覚後、約20億ドル減少したが、コインチェックが顧客への払い戻し補償を決定後すぐに回復傾向を見せ、現時点では約93億6377万ドルとなっている。
release date 2018.1.28
作成日
:2018.01.28
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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