作成日
:2018.09.27
2021.08.31 15:22
米国が主導する金融制裁の包囲網の中にある北朝鮮だが、ワシントンの金融アナリストの報告によると、マネーロンダリングなどによる方法で、仮想通貨を制裁の回避策として利用している疑惑が明らかとなった。
米国は、1917年に制定した対敵通商法(Trading with the Enemy Act of 1917)の下、1950年以来、北朝鮮との貿易を制限する金融制裁を継続しており、西側諸国をはじめとする他国も、核兵器開発に対する抗議として同様の措置を行なっている。このような状況下で、仮想通貨の発展は北朝鮮に新たな抜け道を与えてしまったという。
本件を報告した金融アナリストのRoss Delston氏とLourdes Miranda氏は、共同で以下のようにコメントしている。
北朝鮮は、世界中にサービスを提供している多数の仮想通貨取引所間で、頻繁に資金を移動させています。従来のマネーロンダリングと同じような方法です。そして、米国内の銀行と業務提携関係にある仮想通貨関連サービスを通すことで同国との取引を実現するのです。
Ross Delston & Lourdes Miranda, Financil Researcher and Analyst - Asia Timesより引用
2017年にも北朝鮮は、ハッキングまたはマイニングの方法により11,000ビットコインを入手したと報道されており、さらには、それとは別に韓国の仮想通貨取引所に対してハッキングを行なった疑いがかけられている。また、先月には北朝鮮がビットコインマイニングや仮想通貨取引所の開発を行っているとの報告も上がっており、同国の仮想通貨市場とのつながりが明るみに出始めている。前述の両アナリストは、北朝鮮が獲得した仮想通貨をヨーロッパのウォレットサービスへ送金しているという情報を掴んでいるが、北朝鮮はそこから購入経路を分断し、追跡を困難にさせるために、あえてイーサリアム(Ethereum)、ライトコイン(Litecoin)などを経由させ、最終的に必要なビットコインを購入しているようだ。
なお、北朝鮮と同じように米国より制裁を受けるイランは、経済制裁を迂回する狙いで、国家主導のイランの仮想通貨プロジェクト案を完成させている。また、パレスチナのガザ地区でも、世界経済へのアクセス手段として仮想通貨が利用されている。これらの例と今回の北朝鮮に関する報告で、仮想通貨は制裁などによる経済的孤立から抜け出す手段として有効であることが、より信憑性を増したと言えるだろう。
release date 2018.9.27
仮想通貨の特徴の一つとして、国境が存在しないことが上げられる。仮想通貨の多くは非中央集権型の仕組みとなっており、国、銀行、プラットフォームが存在しなくても個人にて売買が可能である。北朝鮮は金融制裁などの影響による資金不足が深刻化しており、国の収入源として、匿名性が高く、国を超える取引が可能な仮想通貨に高い関心を示しているようだ。また先日、10月に北朝鮮で仮想通貨会議が開催されることが明らかとなった。その目的については、国内外にブロックチェーン技術や仮想通貨取引所を開発する技術を見せつけるためなど、さまざまな憶測が立っている。しかし北朝鮮の住民の多くは仮想通貨への関心や知識が不足しており、インフラやインターネット環境、高性能コンピューターや電力不足などの問題があり、北朝鮮の仮想通貨の発展は先のことではないかとの見方もある。いずれにせよ、北朝鮮が仮想通貨やブロックチェーン技術の導入を進めていることが垣間見れるが、国境が存在しないという仮想通貨のメリットを悪用しないことを望みたい。
作成日
:2018.09.27
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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