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スウェーデン国立銀行、CBDC発行の可能性を探る

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update 2021.08.31 15:28
スウェーデン国立銀行、CBDC発行の可能性を探る

update 2021.08.31 15:28

2021年2月までシミュレーションを実施する意向

スウェーデンの中央銀行であるスウェーデン国立銀行(Sveriges Riksbank)【以下、Riksbankと称す】は、イークローナ(e-Krona)と呼ばれる中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】発行を視野に入れてパイロットを実施しているが、同プロジェクトが未だ初期段階にあることを示唆した。[1]

これまでRiksbankはアクセンチュアと協業して、R3が提供するブロックチェーン技術であるコーダ(Corda)を基礎にパイロット環境を構築しており、シミュレーション期間として2021年2月までイークローナを運用することを決定しているようだ。その結果次第でRiksbankは、アクセンチュアとの契約を6年間延長することができる。今月20日の発表によると、このパイロット環境では他の銀行やエンドユーザーが排除され、限定的な試験が実施されるという。

レポートの中でRiksbankは、このCBDCに関する取り組みを通じて同行がブロックチェーン技術や分散型台帳技術に対する知識を高めることができると言及している。Riksbankは2016年11月からイークローナの発行を検討しており、翌年9月に正式にプロジェクトがローンチされて以来、現金を代替する決済手段の研究開発が本格化している状況だ。当初、Riksbankは分散型台帳技術が未熟であることを理由に、現行の送金システムであるRIXが採用する中央集権型のソリューションを利用し、イークローナを発行すべきだと主張していたが、R3のコーダがその懸念を払拭したと結論づけている。Riksbankは、R3のコーダが省エネルギーでスケーラブルであると同時に、二重送金などの問題にも対処することができると評価しているようだ。

現在、Riksbankが開発するシステムでは、ノードとなる銀行にイークローナが発行され、それがエンドユーザーである消費者や小売業者に流通し、スマートフォンやウェアラブル端末、カードなどを媒体に、P2P(ピア・ツー・ピア)決済に利用される仕組みになっているという。このシステムにおいてRiksbankは、ノードの決定権などの絶対的な権限を持っており、Broctagon FintechのCEOであるDon Guo氏は、それが分散型のシステムがもたらす利点を見失っていると指摘した。しかしながらRiksbankは、現時点でイークローナの発行を確定しておらず、最終的には政治的な判断になると言及している。

実際に各国では技術的および哲学的な観点から、分散型のシステムに対する不安が高まっており、ウクライナの中央銀行は、CBDCにおける分散型台帳技術の採用をためらっている模様だ。これはカナダやシンガポール、日本、欧州圏の中央銀行が、国家間の金融インフラにまで分散型台帳技術をテストしていることが要因になっているという。Riksbankは消費者が利用可能な決済ソリューションとしてCBDCの発行を模索しているが、国民はこの動きをどのように見ているのか、今後も同国での展開に注目していきたい。

release date 2020.02.25

出典元:

ニュースコメント

CBDC発行による影響を精査する各国政府

最近、仮想通貨業界ではCBDCに関するトピックが盛り上がっており、2019年末頃から各国政府の取り組みが流動的になってきている様子がうかがえる。中国ではスウェーデンと同様に、既に中国人民銀行がCBDCの運用テストを実施し、この流れをリードし始めている状況だ。一方、欧州では個別の研究開発が進んでいるものの、依然としてEUがリブラへの対応を模索するなど、CBDCを含むステーブルコインの実用化に向けた共通の規制構築が課題となっており、思わぬ形で他地域に遅れをとっているという。その他にもCBDCの登場で経済政策の実効性が薄れる可能性や、米ドル基軸通貨体制の崩壊が起こるリスクが懸念されているが、各国政府はこれらのリスクにどう向き合っていくのか、今後もその動向を見守っていきたい。


Date

作成日

2020.02.25

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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