作成日
:2020.06.22
2021.08.31 15:32
人気仮想通貨のイーサリアム(Ethereum)を手がけるイーサリアム財団(Ethereum Foundation)が、国際連合児童基金(United Nations Children's Fund, UNICEF)【以下、ユニセフと称す】へ2019年に続いて2回目となる仮想通貨での寄付を行ったことが明らかになった。
ユニセフの仮想通貨ポートフォリオマネージャーであるCecilia Chapiro氏によると、同団体は1,125ETH(約26万2,000ドル)の寄付を受け取っており、現在、投資が必要な新興市場のスタートアップからの申請を受け入れているという。Chapiro氏は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を緩和するために、米ドルと仮想通貨の両方を用いて資金を供給するとし、5社から10社程度のスタートアップ企業にそれぞれ10万ドル相当の投資を行うことを予定している。ユニセフのブロックチェーンリーダーであるChristina Lomazzo氏は、同団体はビットコインでの寄付を行なっていないことを強調し、更に大口のイーサリアムの寄付が必要だと言及した。
これまでユニセフは、バングラディッシュのW3 EngineersやカンボジアのSomlengなどの企業に対し米ドルでの投資を行っていたが、メキシコ、インド、トルコ、アルゼンチン、チリなど9カ国のスタートアップ企業に対しては仮想通貨による投資を行ったという。最近では通信ネットワーク分野に焦点を当てて仮想通貨を供給しており、インドの低所得地域にて米の配達を追跡するアプリを開発したStaTwigなどがその恩恵を受けている。StaTwigの共同創設者であるSid Chakravarthy氏は、同社が2,000軒近くの小売店、1億2,800万人の人々に利益をもたらしていると説明し、今後はワクチンのサプライチェーンに関連する開発にも着手する可能性があると主張した。また、Chakravarthy氏は、ユニセフの投資が食品関連のプログラムにも役立てられると同時に、ブロックチェーンソリューションの発展を促すと評価している。
W3 Engineersの創設者であるRakib Islam氏は、現在、新型コロナウイルスに関する緊急速報機能なども含むP2P(ピア・ツー・ピア)メッセージングサービスを構築するためのブロックチェーンプロジェクトに取り組んでいる。Islam氏によると、W3 Engineersはイーサリアムクラシックラボ(Ethereum Classic Lab)から15万ドルの投資を受け、イーサリアムとイーサリアムのブロックチェーンを用いて開発に着手しており、まともなSIMカードやWi-Fiへのアクセスを持てないバングラディッシュの難民が利用可能なソリューションを開発しているという。一方、カンボジアではユニセフから支援を受けたDavid Wilkie氏のSomlengがオープンソースのクラウド通信プラットフォームを開発し、アフリカや東南アジアで音声ベースのコミュニケーションツールとしてサービスを展開している状況だ。
ユニセフは多様な企業に関心を示しており、積極的に投資を行っていくことを表明している。2018年には仏ユニセフが主要仮想通貨による募金の受付を開始するなど、組織全体が仮想通貨市場に接近しているようだが、これが世界をどのように変えていくのか、今後もユニセフの取り組みに注目していきたい。
release date 2020.06.22
仮想通貨市場ではオープンソースやプロフィットシェアリング、自立分散型組織(Decentralized Autonomous Organization, DAO)などの文化が根付いており、多くの仮想通貨関連企業が寄付や慈善活動に対して積極的な動きを見せている。新型コロナウイルスの影響で景気が後退する中、例えば、大手仮想通貨取引所のバイナンスは慈善団体を通じて寄付を実施した。また、ブロックチェーン関連企業のBitfuryはコンピュータリソースを寄付しており、米国のワシントン大学(University of Washington)が立ち上げたワクチン開発プログラムに貢献しているという。このような仮想通貨関連企業によるチャリティーは世界が抱える問題を解決するだけでなく、業界全体のイメージアップにもつながると考えられるが、人々はこの取り組みをどのように評価するのか、今後も仮想通貨市場の動向を見守っていきたい。
作成日
:2020.06.22
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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