作成日
:2020.06.09
2021.08.31 15:32
フィラデルフィア連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of Philadelphia)は、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】が既存の銀行システムに与える影響に関して警告し、最終的に商業銀行が不要になる可能性があると指摘した。
先日、フィラデルフィア連邦準備銀行は「Central Bank Digital Currency: Central Banking for All?」と題した報告書を発行しており、CBDCが商業銀行に与える影響を調査した結果を公開した。その中で同行はCBDCがお金と銀行の歴史に変革をもたらし、中央銀行を全ての人々に開かれたものにする可能性があると主張している。CBDC発行に伴ってFRB(Federal Reserve Board)が一般大衆の預金口座を開設するフレームワークを採用した場合、人々は中央銀行に資金を保持することができるようになり、それが銀行システム全体の構造を変えてしまうという。
中央銀行が預金サービスを提供することは可能だが、商業銀行との関係性の維持にはメリットがある。現在、FRBは商業銀行に間接的に投資を行っている状態のため、これらの銀行が危機に陥った際に直接的な被害を免れることが可能で、少なくとも商業銀行より先に機能しなくなるのを回避することができる。また、この二層構造の銀行システムは人々の預金が信用の高い中央銀行に集中することを防いでおり、結果的に商業銀行を守る役割も果たしている。
これまでイングランド銀行(Bank of England)の元総裁がCBDCに関する懸念を表明したのに加え、日本銀行の雨宮正佳副総裁もCBDCが日本にとってメリットになり得ないとの考えを示した。中国では既に中国農業銀行がCBDCのテストアプリを開発しているようだが、各国政府はこの動きにどう対応するのか、今後の展開を見守っていきたい。
release date 2020.06.09
現在、米国政府は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で落ち込んだ経済を立て直すために低金利政策を採用しており、政策金利を0.25%にまで引き下げている。同じくイングランド銀行もマイナス金利を導入することを検討しているが、グローバルブロックチェーン専門家であるMassimo Buonomo氏は利息の減少が銀行口座の必要性を低下させていると言及した。また、Buonomo氏はCBDCが銀行口座を完全に排除する可能性があると指摘しており、中央銀行が国民にCBDCを直接的に発行する一層モデルは社会保障制度のような形で実現可能であるのと同時に、最も必要な人々に通貨を分配することができるという。実際に米国ではコインベースがUSDCリワードを開始するなど、米ドル預金による利息収入を代替するような仮想通貨関連サービスが誕生しているが、最終的に米政府はどのような決断を下すのか、今後も同国での動きに注目していきたい。
作成日
:2020.06.09
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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