作成日
:2020.05.25
2021.08.31 15:32
今月20日、イランのハッサン・ロウハニ大統領が、イラン・イスラム共和国中央銀行(Central Bank of Iran)【以下、CBIと称す】やエネルギーおよび情報通信技術関連機関に、仮想通貨マイニングを国家戦略化するよう命じたことが明らかになった。
最近、イランでは議会が通貨の密輸規制を仮想通貨に適応するための新しい法案を審議しており、仮想通貨市場を規制する流れが強まっている。この法案には通貨密輸を行なった者に罰金や懲役刑に課す内容が盛り込まれているが、現在、イラン国内では米国が主導する経済制裁を回避するために仮想通貨が用いられているという。また、この新しい法案は国内の仮想通貨取引所がCBIへ登録することを義務化する役割も担っているようだ。
2019年7月にイラン政府は仮想通貨マイニングを合法的な産業として認めており、国内のマイニング事業者にライセンスを発行し、採掘した仮想通貨を売却することを許可している。今年1月時点での報告によると、イラン政府は最初の6カ月間で1,000社以上のマイニング事業者にライセンスを発行しており、同国内で生み出されるハッシュパワーはビットコイン(Bitcoin)ネットワーク全体の4%で、昨年9月の2倍以上の規模に達しているという。
ロウハニ大統領が仮想通貨マイニングに対する規制強化を求めている理由は明らかではないものの、イラン政府は国内の資産が他国に流出することを懸念しているようだ。過去にイランではビットコインが高騰しプレミア価格を付け、多くの国民が仮想通貨によるリスクヘッジを行なっていることが明白になったが、このロウハニ大統領の命令がどのような影響をもたらすのか、今後も同国政府の動きに注目していきたい。
release date 2020.05.25
米国を中心とする西側諸国は、仮想通貨取引が経済制裁の抜け道となる可能性を危惧していたが、現在、ほとんどの国で仮想通貨規制が導入されており、イランやベネズエラ、北朝鮮などの制裁対象国と直接的に取引することは困難となっている。実際に大手取引所のバイナンスはイランで顧客資産の引上げを促すと同時に、国内のIPアドレスからアクセス履歴があるユーザーの口座を凍結するなど、同国との関わりを完全に断ち切っているという。このような仮想通貨関連企業の協力により、経済制裁の包囲網が機能不全に陥らずに済んだが、一部国家はより過激な手段で国際取引に必要な外貨獲得を試みているようだ。国際連合安全保障理事会(United Nations Security Council)によると、北朝鮮はサイバー攻撃で仮想通貨や外貨を6億ドル以上盗み出しており、今も尚、世界的な脅威となっているだけに、更なる対策が必要だと言えるだろう。
作成日
:2020.05.25
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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