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バイナンス、制裁を受けるイランで顧客資産の引上げを促す

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update 2021.08.31 15:27
バイナンス、制裁を受けるイランで顧客資産の引上げを促す

update 2021.08.31 15:27

米国政府の影響力を恐れイラン市場から撤退か

仮想通貨取引所のBinance(本社:Suite 603, Tower 2, Lippo Centre, 89 Queensway, Admiralty, HongKong[1])【以下、バイナンスと称す】は、経済制裁の流れを受けて、イラン国内のユーザーに資金を引き出すよう促していることが明らかになった。

イランのバイナンスユーザーは、バイナンスから資金の引き出しを促す旨のEメールを受け取っており、イランブロックチェーン協会の会長であるSepehr Mohamadi氏によると、11月5日に米国の新しい経済制裁が決定して以来、このようなEメールが増加しているという。当初、バイナンスは今回の件についてコメントを拒否していたが、KYC(顧客確認)のプロセスでイランパスポートを提示して口座開設を行なったユーザーのアクセスを遮断していたことが明らかになっているほか、今週に入ってバイナンスは、イランのIPアドレスからアクセスのある口座に対して、仮想通貨資金の引き上げの警告を始めたことが、イラン国内の複数のトレーダーによって伝えられている。

テヘランを拠点とするブロックチェーンプロジェクトのAreatakに参画する研究者のNima Dehqan氏は、イラン国内のユーザーが仮想通貨取引所にあまり信頼を置いていない現状を語っており、過去には、BitMexやBittrexが、顧客の仮想通貨資産を返却することなくイラン国籍ユーザーの利用を禁止した例もあるという。一方で、ワシントンDCを拠点とするコンサルティング会社、FS Vectorの経営パートナーであり、元コインベースの政策責任者であるJohn Collins氏は、仮想通貨取引所が米国市場へのサービス提供を継続したいのであれば、米国の規制に従うことはごく当然の流れで、経済制裁の対象となる地域のユーザー受け入れは難しいと、取引所の意思とは関係なく大局に左右される側面もあることを論じている。

このような流れは、イランのビットコインコミュニティの結束を強め、地域のビジネスや支援ネットワークを構築する結果を招いており、Dehqan氏は、イラン国内の実情について以下のように発言している。

TelegramやWhatsAppといったコミュニケーションアプリで、グループが形成されていて、その中の機能で仮想通貨が取引されています。ユーザーが、お互いを信頼することで関係が成り立っており、密接に結びついたコミュニティとなっています。

Nima Dehqan, Researcher of Areatak - CoinDeskより引用

米国の規制当局は、EtherDeltaなどの仮想通貨取引所に対しての取締りを強めており、他の米国市場に進出する取引所がKYCに注意を払うきっかけとなっている。一部の仮想通貨取引所では、実店舗を構えることで従来のKYCのプロセスを遂行しようとしており、イラン当局に正当性を問われた場合に備えているようだ。米国政府の対応を恐れたバイナンスは、イラン当局がベネズエラのペトロのような国家主導の仮想通貨開発の計画を発表するタイミングで、イラン国内のユーザーとの関係を絶つように動いているのかもしれない。

バイナンスは米国では営業しておらず、規制当局の注意は国内市場の企業に向いているというが、同ウェブサイトへのトラフィックのおよそ13%は、米国から来ており、全くの無関係というわけではないだろう。シカゴに本社を置く法律事務所、Smolinski Rosario Lawで仮想通貨に関連する問題を専門とする弁護士のNelson Rosario氏によると、米国の規制当局は、仮想通貨取引所に狙いを絞り始めていて、バイナンスのリスク回避とも見られる行動は、世界中の人々を相手にビジネスを行うことがいかに複雑で、事前にどのような落とし穴があるか把握することがほぼ不可能であることを示す良い例だという。

国内市場では、イラン政府が仮想通貨市場をコントロールすることで、経済を完全に支配することが懸念されているが、イランの仮想通貨ユーザーは、外部のプラットフォームサービスに頼るよりも、小規模なマイニング事業を立ち上げることで乗り越えようとしている。Dehqan氏によると、仮想通貨取引所を利用する選択肢が狭まる中でも、イラン国内の仮想通貨熱は高いままで、今回のバイナンスのニュースは、テヘランのビットコインコミュニティには大きく影響しないという。イランの人々の間では、インフレする自国通貨への対策として、仮想通貨のマイニングや長期保有が投機的な利用よりも一般的となっているようだ。

イランでのビットコインなどのマイニングは、経済制裁の範疇外で、他の地域よりも電力コストが低いことから、高い収益性を誇っているという。過去に1,000件以上のマイニングのコロケーション契約に関する引き合いを受けたDehqan氏の予測では、イラン国内での仮想通貨マイニングは、他国の4分の1程度の費用で、1キロワット/hの電力コストは、1セントに満たないという試算もある。また、イランでは、ワールドマイニングサミットが開催されて以来、テヘランへは多くの人々がマイニングデバイスの購入を求めて訪れており、中には1ヶ月で100台以上のデバイスを販売する者も存在するようだ。現地の情報によると、イラン政府は、急速に拡大するマイニング事業を管理するための法整備を検討しているという。

release date 2018.11.16

出典元:

ニュースコメント

マイニングコストで圧倒的なアドバンテージ

ITの世界では、データセンターが大規模なシステムを運用するためにサーバーやストレージを管理する欠かせない施設となっているが、近年、設備投資を抑える目的で、コロケーションサービスの利用が拡大している。この流れは、仮想通貨業界も例外ではなく、マイニングマシンを運用する必要があるマイニングプールやその他事業者向けへのサービスも既に存在し、先日、ロシアでもHuobiの新オフィスが、マイニングホテルと呼ばれる従量課金型サービスの開発に携わることが発表された。マイニングホテルは、月額課金の利用料と電力消費量で料金が決定され、小規模なマイニング企業でも高額な投資を必要とせず利用できるようになっている。資源大国として知られるロシアでは、電力コストも比較的低く、マイニングに適している環境であると言われているが、それでも1キロワットあたり5ルーブル(約8セント)のコストがかかるという。Dehqan氏の予測が正しければ、イラン市場での仮想通貨マイニングのコストアドバンテージは、ロシアのマイニングホテルとの単純比較で約8倍ということになるが、イラン政府や業界はこの強みを生かし活路を見出すことはできるだろうか。今後の展開に注目していきたい。


Date

作成日

2018.11.16

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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