作成日
:2020.05.07
2021.08.31 15:32
人気のメッセージングアプリを展開するTelegram Group Inc【以下、テレグラムと称す】が、投資資金の72%を払い戻すことで独自ブロックチェーンプロジェクトのTON(Telegram Open Network)から米国の投資家を排除しようとしていることが明らかになった。
当初、テレグラムは昨年10月にTONをリリースする予定だったが、2回にわたる延期の後、2021年4月までプロジェクトの完了を遅らせることを決定した。ローンチ計画が変更となったことから、テレグラムにはグラムトークン(Gram Token)を購入した投資家に返金する義務が生じているという。これに対してテレグラムは、初期投資金額の72%を受け取ってプロジェクトから離脱する、または、資金を1年間のローンとして同社に貸し出す選択肢を投資家に提案しているようだ。
テレグラムは1年間のローンを提供する投資家に対し、グラムトークンまたはその他仮想通貨で資金の110%を返済すると言及したものの、規制当局や弁護士との議論の上、仮想通貨での払い戻しが確実性に欠けることを理由にこの提案を撤回している。依然としてテレグラムは投資をローンに切り替えるオプションを提示しているが、その返済は仮想通貨以外の手段で行われる見通しだ。また、テレグラムはこのローンが「U.S. Securities Act of 1933」のレギュレーションS(米国外での証券販売に関する規定)に基づくと説明しており、米国籍以外の投資家のみに有効であることを強調している。
最近、米証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】は、テレグラムのグラムトークン販売を違法と判断し、同社との裁判を進めている状況だ。今の所、テレグラムがTONの開発を継続できるかどうかは非常に不透明になっているが、同社はこの問題にどのように決着をつけるのか、今後もその展開を見守っていきたい。
release date 2020.05.07
これまで米国連邦政府は仮想通貨を直接的に規制するような動きを見せておらず、日本や他の先進諸国とは全く異なるアプローチで仮想通貨市場に働きかけている。ニューヨーク州を始めとする州政府はBitLicenseなどの具体的な制度を導入しているが、SECは既存の証券法に違反するICO(イニシャルコインオファリング)を取り締まることで仮想通貨市場での判例を積み上げている状況だ。実際にSECは違法なICOを実施したKikを提訴したのに加え、複数の仮想通貨関連企業に対して罰金を課すことで間接的に指導を行なっているという。結果的に米国ではSECへの登録免除を利用したICOが急増し、数百万ドルから数千万ドル規模の資金調達が数多く行われるようになった。テレグラムもこの制度を利用して資金調達を行なったと主張しているが、裁判所はどのような判決を下すのか、今後も米国の仮想通貨市場での動きに注目していきたい。
作成日
:2020.05.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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