作成日
:2019.06.05
2021.08.31 15:26
米国証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】は、違法なICO(イニシャルコインオファリング)を行ったとして、仮想通貨プロジェクトのKin(キン)を手がけるKik Interactive【以下、Kikと称す】を提訴することを発表した。
SECによると、Kikは米国の証券法で定められている登録を行わずに、Kinコイン(Kin Coin)と呼ばれる仮想通貨を無断で販売したという。Kikは、匿名性を重視したブロックチェーンベースのメッセージングアプリを開発していたが、2017年初旬、資金不足に陥ったことから機関投資家や個人投資家向けにICOの実施に踏み切った。結果として合計1億ドル近い資金調達に成功し、そのうち、米国内だけで5,500万ドルもの資金を集めている。
SECは、Kinコインの販売は「投資」の名目で行われたことを指摘しており、これに対してKikはメッセージングアプリにおけるサービスの一環であることを主張している。しかしSECは、Kinコインを利用して購入できるサービスやシステムが提供されていないことから、Kikの主張は事実と異なるという認識のようだ。これについてSECの執行部門で共同ディレクターを務めるSteven Peikin氏は、今回未登録で行われたKinのICOは、法的根拠のある情報に基づいて行う投資家の投資判断を妨げるものになると批判しており、同じく部長を務めるRobert Cohen氏は、投資家がKikからリターンを期待するのは自然なことだと述べ、Kinコインが証券法に抵触することを強調した。
Kinコインの時価総額は、2018年1月におよそ10億ドル付近まで達したが、現在は2,500万ドル以下の低い水準で推移している状況だ。SECの公式発表では、Kikが3兆KINを保有していることが伝えられており、現金化を目的に、これらの仮想通貨が流通市場(セカンダリーマーケット)で売却される可能性があると言われている。SECはKikに対し、恒久的な差止命令および罰金とその利息、訴訟費用の支払いを求めているものの、KinはSECに対抗するための基金を設立するなど、徹底抗戦の構えを見せている。米国では新規ICOの減退に拍車が掛かっているが、この裁判の結果が市場にどのような影響をもたらすのか、今後の展開にも注目していきたい。
release date 2019.06.05
2017年以降、SECは仮想通貨市場でのICOを強く規制する姿勢を見せており、執行部門に組織した専任のサイバーユニットが本格的な取締りに乗り出しているという。その甲斐もあってかSECは、Kik同様に一般の人々らの資金調達を試みた違法な仮想通貨関連企業に罰則を科し、仮想通貨市場でも証券法の効力を維持することに成功している模様だ。過去には、2018年にParagonとAirfoxのICOプロジェクトに対してSECが罰金を課すほか、マンチー(Munchee Inc.)やGladius Network LLCが企てたICOが問題となったが、これらのケースは全て和解に至っているようだ。対照的に今回のケースは、Kikが潤沢な訴訟費用を用意していることやコミュニティの支持を受けていることから、SECとの戦いが長期戦になる恐れがある。決着が先延ばしになることは、開発を急ぐ企業側にとっても痛手となるが、今後、早期解決の糸口が見つかることに期待したい。
作成日
:2019.06.05
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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