作成日
:2020.05.07
2021.08.31 15:33
0xB10Cと名乗るビットコイン(Bitcoin)エンジニアは、大手仮想通貨デリバティブ取引所のBitMEXによる膨大なトランザクションがビットコインの手数料増加を招いていることを報告した。
0xB10Cによると、BitMEXはユーザーの出金要求などに対応するために、EST(東部標準時)午前9時8分頃に数千件ものトランザクションを同時に送信しているという。BitMEXは毎日同じ時間帯に数メガバイトのトランザクションを送信しているため、少なくとも昨年の9月以降、最大1時間ほどのピークタイムを生み出しており、ビットコインのネットワークを圧迫しているようだ。0xB10CはBitMEXがトランザクションを最適化した場合、1日あたり約1.7BTC(約1万5,000ドル)または合計手数料の7%が削減される可能性があると主張している。
ビットコインのトランザクションを完結させるには、ユーザーが少額の手数料を支払う必要があり、その額はネットワークの混雑具合によって変動する。大量のトランザクションが流入してワークロードが急増すれば、割高な手数料を支払うことになるが、これらの要因に不均衡が生じた場合は取引承認の遅延につながるという。従って低コストでの取引を望む一般ユーザーにとってBitMEXのような大手取引所の介入は好ましくないが、ビットコインの半減期に関する議論が過熱している現在、弾力性のある手数料モデルを維持することはセキュリティ面で有益だとの見方も強まっている。
これまで仮想通貨コミュニティはビットコインを効率的に利用するために、大手取引所やウォレットサービスプロバイダーにSegWitなどのスケーリング技術を導入するよう強く求めてきた。これに対してCoinMetricsの共同創設者であるNic Carter氏は、取引所がシステムを改善した結果、ビットコインの手数料が0に近づくことに違和感を感じると批判している。最近では仮想通貨のローン市場でマージンコールが発生するなど、新型コロナウイルス(COVID-19)による仮想通貨市場への影響が見られるが、実際にビットコイン価格が急落した際にはSegWitの更新を施されたノードの使用率が5%低下しており、収益性の悪化を嫌ったマイナーの行動が確認されている。
世界最大の取引所であるバイナンスは未だSegWitを実装していないが、業界標準となりつつあるスケーリング技術の採用を避けることはできないと言えるだろう。結論的に0xB10Cは、BitMEXがコインベースと同様にビットコイントランザクションのバッチ処理を実施することを推奨している。加えて、Schnorr/Taprootと呼ばれる署名技術の実現が取引効率を向上させる可能性があると言及しているが、ユーザーや取引所を取り巻く環境はどのように変化していくのか、今後も仮想通貨市場の動向を見守っていきたい。
release date 2020.05.07
ビットコインはSHA-256と呼ばれる暗号化技術を基礎としたPoW(プルーフ・オブ・ワーク)型のマイニングアルゴリズムを活用し、ブロックチェーンネットワークを構築している。このネットワークに参加するマイナーは、ハッシュパワーを供給してマイニングに成功することでビットコインを獲得できるが、現在、それに必要な電力量が年々増加していることが問題視されているようだ。ビットコインマイニングの年間消費電力量は、過去の推計で4テラワットから5テラワットと言われており、この値は2017年の香港におけるそれと等しいとされている。これに対して人気仮想通貨のモネロ(Monero)はマイニングアルゴリズムをRandomXに変更し、モバイルデバイスなどの低スペックな汎用機からでも実行可能なマイニングモデルを採用した。既に大手スマホメーカーのHTCがEXODUSにモネロのマイニング機能を統合するなど、効率的なマイニングスキームが拡大しつつあるが、これがどのような変化をもたらすのか、今後も仮想通貨市場での展開に注目していきたい。
作成日
:2020.05.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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