作成日
:2020.04.29
2021.08.31 15:32
米ニュージャージー州を拠点にするLGO Markets【以下、LGOと称す】が、同社のクライアントを対象に事前入金不要の仮想通貨取引サービスを提供していることが明らかになった。
LGOのCEOであるHugo Renaudin氏によると、同社は主に仮想通貨ヘッジファンドやマーケットメーカーを中心とした50社以上のクライアントを抱えており、これらの企業に対して与信限度額内での仮想通貨取引を許可しているという。クライアントは与信審査を受ける必要があるものの、それをクリアできれば、最大数百万ドル規模の与信枠が付与されるようになっている。最終的にクライアントは東部標準時間の午前10時までに現金決済を行わなければならないが、資金を預け入れない分、通常の仮想通貨取引よりもスケーラブルかつ柔軟なオペレーションを実行することが可能だ。
このような取引サービスは既存の金融市場では当たり前のように提供されているが、高いリスクを伴う仮想通貨市場でのLGOの取り組みは、非常に稀な例だと言えるだろう。ErisXのCPO(Chief Product Officer)兼CSO(Chief Strategy Officer)であるMatt Trudeau氏は、取引リスクを軽減するためにLGOがある程度の準備金を用意すると同時に、クリアリングハウスとして保有する仮想通貨と現金を決済に割り当てる必要があると指摘している。実際にLGOは2018年のトークンセールを通じて3,600BTC(当時約3,600万ドル)の資金調達に成功したのに加え、仮想通貨および法定通貨による借入を行い準備金を確保しているようだ。
LGOはこの仮想通貨取引サービスを提供するにあたり、マルチシグウォレットやハードウェアウォレットを用いた管理体制を構築する案を検討していたが、結果的にクライアントの資金を直接管理しないスキームを採用している。昨年、LGOはビットコインの現物取引を開始しマルチシグウォレットを導入したが、クライアントの需要がなかったことを理由に廃止するに至った。それでも今年に入ってLGOの事業は好調を維持しており、2月に9,600万ドル、3月に1億3,800万ドル、4月に3,300万ドル相当のトランザクションを処理しているようだ。
現在、LGOはニューヨーク州のBitLicenseやFINRA(Financial Industry Regulatory Authority)のブローカーディーラーライセンス、NFA(National Futures Association)のブローカーライセンスなどは取得しておらず、金融犯罪捜査網(FinCEN)のMSB(Money Services Business)登録業者として米国での事業を継続しているという。LGOはRenaudin氏の出身地でもあるフランスの管轄地域への本拠地移転を検討しているようだが、今後も同社のグローバル市場での動向を見守っていきたい。
release date 2020.04.29
近年、仮想通貨市場でハッキングによる顧客資産の盗難が横行していることから、中央集権型の仮想通貨取引所やカストディサービスの利用がリスクになり得るとの認識が高まっている。BitGoは1億ドル以上の損失に対応する仮想通貨保険を提供し、この課題にアプローチしているが、一方で分散型取引所(DEX)が新たなソリューションとして定着し始めている状況だ。特に昨年末に大型アップグレードのKatalystを実装したKyber Networkなどで取引需要が高まっており、今年3月の全分散型取引所における取引高は前月の52%増で過去最高となる6億6,819万ドルを記録したという。LGOのような信頼性が高い機関投資家向けの仮想通貨取引サービスでは、既存の金融市場のように与信限度額内での取引が主流になる可能性もあるが、仮想通貨市場はどのように偏移していくのか、今後もそのトレンドの変化を注視していきたい。
作成日
:2020.04.29
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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