作成日
:2020.02.10
2021.08.31 15:29
米国連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)【以下、FRBと称す】の理事であるLael Brainard氏は、当局が中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】の実現可能性を検証していることを明らかにした。
今月5日、スタンフォード大学で行われたカンファレンスでBrainard氏は、米ドルの役割を考えると、CBDCに関する研究と政策を進める必要があると述べ、当局が分散型台帳技術や仮想通貨の潜在的なユースケースを探っていると語った。現在、複数の中央銀行が仮想通貨の利用を検討しているが、FRBは世界貿易における米ドルの優位性が損なわれることを懸念しているようだ。これに加えBrainard氏は、デジタル化が進むことでより安価で利便性の高い決済手段が実現する可能性があると言及している。
各国政府は、Facebook(フェイスブック)がリブラ(Libra)の立ち上げを発表したことに警戒を強めており、Brainard氏は、同社が世界人口のおよそ3分の1をユーザーとして抱える事実を強調し、お金の形態やその発行元、決済の記録方法などに関して早急に議論を交わす必要があると主張した。それと同時にBrainard氏は、CBDCのコスト削減効果や運用上の脆弱性、仮想通貨を取り扱う銀行やその他金融機関との住み分け、通貨価値の安定性など、金融規制の観点から総合的な判断を下すべきだと指摘している。
このような状況の変化に対して国際決済銀行(Bank for International Settlements, BIS)および国際通貨基金(International Monetary Fund, IMF)は、各国の中央銀行に対して少なくとも仮想通貨を発行する可能性を考慮するよう促しているという。実際にカンボジア国立銀行はCBDC発行を今四半期中に計画しているが、米FRBはどのような対応を見せるのか、今後も当局の動向に注目していきたい。
release date 2020.02.10
昨年、中国政府がデジタル人民元の発行を発表して以来、各国でCBDC導入を見据えた動きが加速しており、仮想通貨市場ではその進捗に注目が集まっている。特にFacebookが規制上の問題で遅れをとっていることから、中国人民銀行がDCEPを発行する可能性が出てきているため、米国政府には焦りの色が見え始めている状況だ。これを受けて米国ではCBDCの発行に向けて、FRBなどの政府機関だけでなく、デジタルドル財団がアクセンチュアと協業し、まずはシステム検証用のフレームワーク構築を目指して研究開発を進めるなど、民間企業もこの分野の発展に向けて政府の背中を後押しているようだ。デジタルドル財団はFRBと連携してこのプロジェクトを推進する意向を示しているが、米中を中心としたCBDCを巡る競争は、どのような展開を見せるのか、今後も各国での取り組みを見守っていきたい。
作成日
:2020.02.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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