作成日
:2019.10.29
2021.08.31 15:29
元中国共産党の高官で金融経済委員会のディレクター代理を務めたHuang Qifan氏は、Facebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)に先駆け、中国人民銀行(People's Bank of China)【以下、PBoCと称す】がデジタル人民元と呼ばれる独自仮想通貨のDCEP(Digital Currency/Electronic Payment)を発行する可能性があることを示唆した。
これまでPBoCは2014年に仮想通貨の調査を開始し、国内の研究機関を通じてDCEPの開発を目指すと発表していた。その中でFacebookのリブラに関する情報が公開されて3カ月後の今年9月に、決済システム部門のディレクター代理であるChangchun Mu氏を研究所長に任命するなど、同行はこのプロジェクトを加速させる動きを見せている。また、先日、習近平国家主席がブロックチェーン技術を受け入れる内容の発言をした影響もあり、DCEP関連の取り組みが活発になっているようだ。PBoCは公式文書の中でDCEPとリブラを比較するなど、Facebookをライバル視していることがうかがえるが、Qifan氏はDCEPの発行が同社の企てに先行するとの見解を示しているという。
これに加えQifan氏は、このDCEPとリブラの開発競争に関して以下のようにコメントしている。
テクノロジーが成熟しているため、PBoCが国家主導の仮想通貨を最初に発行する可能性は高いと言えるでしょう。個人的にはリブラの試みは成功しないと思っています。いくつかの企業はビットコイン(Bitcoin)やリブラのような仮想通貨を発行し、法定通貨に対抗しようとしていますが、分散型システムのブロックチェーンを基礎とした仮想通貨が本当の意味で資産としての役割を果たすことは難しいです。
Huang Qifan, Former Deputy Director of Congressional Financial and Economic Affairs Committee - CoinDeskより引用
この講演の中でQifan氏は国家主導の仮想通貨が世界の金融市場に与える影響に関しても触れると同時に、DCEPの価値が国の信用や金保有量、財政収支、GDPに連動することが想定できると述べた。これに加えて、Facebookのリブラなどの民間企業が開発を進めるステーブルコインの脅威に対しては、政府や中央銀行が独自仮想通貨を発行することが有効だと断言している。Qifan氏によると、現在、24カ国が90社を超える多国籍企業と連携して分散型台帳技術の開発に取り組んでいるが、EU(欧州連合)や日本、ロシアはSWIFT(国際銀行間通信協会)の代替となり得る仮想通貨ネットワークの構築を試みているという。
中国共産党は党員の忠誠を証明するための分散型アプリケーション(dApp)であるOriginal Intentions Onchainをローンチし、公言通りにブロックチェーンを様々な分野に導入する姿勢を示している。習近平国家主席の発言でビットコイン価格が2,500ドルの急騰を見せるなど、いまや中国は仮想通貨市場を左右する存在となったが、今後もその動向を見守っていきたい。
release date 2019.10.29
先日、習近平国家主席の仮想通貨に関する発言があった後、中国最大の検索エンジンであるバイドゥでは、ブロックチェーンおよびビットコインをキーワードとする検索量が200%増加するなど、仮想通貨に対する関心が高まっているという。これに加えてQtumやVechain、オントロジー(Ontology)、ネオ(NEO)、トロン(Tron)、Bytomを含む、中国発の仮想通貨価格が25%から90%の大幅な上昇を見せている状況だ。一方、米国ではFacebookのCEOであるザッカーバーグ氏が米下院の公聴会でリブラに関して証言し、当局の規制を遵守できなければ、Libra Associationからの撤退も辞さないと述べたことが仮想通貨コミュニティの落胆を誘った。また、米CFTC元会長もビットコインバブルの終焉を示唆しており、米中で対照的な仮想通貨市場の展望となったが、今後も両国での展開に注目していきたい。
作成日
:2019.10.29
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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