作成日
:2019.10.23
2021.08.31 15:29
米商品先物取引委員会(Commodities and Futures Trading Commission)【以下、CFTCと称す】で会長として5年の任期を今年4月に終えたChristopher Giancarlo氏は、ドナルド・トランプ大統領の共和党政権が仮想通貨を対象とした先物商品を承認したことにより、2017年のビットコイン(Bitcoin)バブルが終焉を迎えたとの見解を示した。
今月21日にサンフランシスコで開催されたPantera Summitの中でGiancarlo氏は、一昨年末にかけてビットコイン価格が劇的に上昇し、2008年の金融危機以来となるバブル相場が到来したが、トランプ政権が協調して行動したため、それが終息する結果になったと説明した。米国では2017年12月1日にChicago Mercantile Exchange(CME)およびCBOE Futures Exchange(CFE)でビットコイン先物の取り扱いが開始されたが、その後、同月17日からビットコイン価格はピーク時の2万ドルから下降線をたどっている。最終的にビットコイン価格が2018年後半に3,000ドルの安値を記録した理由に関しては様々な見方があるものの、Giancarlo氏によると、先物商品を利用して容易にショートポジションを取れるようになったことの影響が大きいという。
更にGiancarlo氏は仮想通貨市場と米国政府の動向に関して次のようにコメントしている。
当時、CFTCおよび米証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】、財務省の関係者やNational Economic Council(国家経済会議)のディレクターを務めたGary Cohn氏は、ビットコイン先物のローンチがビットコインバブルを終わらせるとの考えを示していたが、まさにその通りになりました。バブル相場が形成された際、それに対する最善策は市場と対話できるようにすることだと思います。ショートポジションが取れなければ、とんでもない価格がついていると感じても、その相場感を表現することはできません。CFTCはこの状況に上手く対処しましたが、リーダーシップレベルでは財務長官のSteven Mnuchin氏やGary Cohn氏はビットコイン先物が流入する機関投資家の資金に規律をもたらすと予想していたのです。
Christopher Giancarlo, Ex-Chairman of CFTC - The Daily Chainより引用
Giancarlo氏によると、2017年のビットコインバブルは2008年の金融危機と同様に取り扱う必要があり、CTFCはその失敗と同じ過ちを犯さないためにも、加熱する仮想通貨市場に対して迅速な措置を施したという。また、Giancarlo氏は仮想通貨市場の自由を保ちながら、規律をもたらさなければならないと発言し、2017年の場合、ビットコイン先物の承認がその具体策になったと結論づけた。今月初めにビットコイン価格が8,000ドル台に復帰して、仮想通貨市場は再び勢いを取り戻しつつあるが、今後もその動向に注目していきたい。
release date 2019.10.23
Giancarlo氏が語るように、CFTCは仮想通貨市場の現状を受け入れて、それに沿った規制を設ける方向で取り組みを進めているが、対照的にSECは不明瞭なリスク要因を嫌ってか仮想通貨関連商品のローンチに消極的な姿勢を示している。今月10日にもSECがBitwiseによるビットコインETFの提案を拒否し、米国初となる仮想通貨を対象としたETF(上場投資信託)の誕生を見送って仮想通貨市場の落胆を誘う結果を招いた。また、SECは仮想通貨市場への金融法の適応を厳格化する意向を表明しており、先月、メッセージングアプリケーションを展開するKikがICOの正当性をめぐり事業停止するなど、仮想通貨関連企業の中には厳罰をくらう者も現れ始めているという。世界でも有数の仮想通貨大国となっている米国だが、拡大する仮想通貨市場に対してどのようなアプローチを取るのか、今後も同国政府の動きを見守って行きたい。
作成日
:2019.10.23
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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