作成日
:2020.02.04
2021.08.31 15:29
フランスのパリに拠点を置くハードウェアウォレットプロバイダーのLedgerは、今回、英国が欧州連合(European Union)から離脱することを機に、ロンドンの金融街であるカナリー・ワーフに設置されている同社の電子広告板に「Take Back Control(コントロールを取り戻す)」とのスローガンを掲げる広告キャンペーンを開始した。
このスローガンはもともとブレグジット(Brexit)賛成派が使用していたものだが、LedgerのCEOであるPascal Gauthier氏によると、同社はビットコイン(Bitcoin)の特徴を強調するためにこれを採用したという。またGauthier氏は、広告が示すように、仮想通貨だけが本当の意味で人々の主導権を取り戻すことに貢献する可能性があると指摘し、この価値観がブレグジット賛成派と仮想通貨コミュニティの間で共有されていると主張した。Ledgerは英国内にオフィスを有していないものの、前四半期、国内市場向けのオペレーションを開始しており、この広告キャンペーンを通じてプレゼンスの確立を狙っているようだ。
また、Gauthier氏はブレグジットとこの広告キャンペーンに関して以下のようにコメントした。
コントロールを取り戻すというフレーズが2つの異なる事象にかかっているのは面白いと思います。ビットコインのキャッチフレーズのひとつであるお金、デジタルな機密、秘密鍵の制御を連想させる方法で効果的に表現できたのは素晴らしいことだと言えるでしょう。ブレグジットはまさに英国中心の動きであり、国境と通貨の独立性を取り戻すことを意味します。反対にボーダーレスでグローバルなテクノロジーであるビットコインは、ブレグジットの背景にある自国主義の真逆に位置するものです。
Pascal Gauthier, CEO of Ledger - CoinDeskより引用
オーストリアのウィーンに本拠を構える仮想通貨取引所のBitpandaでCEOを務めるEric Demuth氏は、このブレグジットに関して大衆が長期的な影響を考慮しておらず、一部政治家の短期的な目標に惑わされているように感じるとの厳しい見方を示した。これに加え、Demuth氏は、国民投票の結果が人々の生活に与える変化について考えさせたいと語っている。Bitpandaはカナリー・ワーフを含むロンドンの3カ所、スコットランドのグラスゴー、ベルギーのブリュッセルなどの合計38カ所で「Millions of people can't be wrong. Unless they're British(何百万人もの人々が間違っていることはありません、イギリス人でなければ)」との風刺的な広告を掲載するキャンペーンを実施し、欧州内のユーザーベースを12.68%拡大させることに成功しているようだ。
英国の仮想通貨コメンテーターであるPeter McCormack氏は、この広告に対して偽善的だと批判しており、本当のビットコインユーザーはおそらくブレグジットを支持すると言及している。一方、米国の著名な起業家であるCharlie Shrem氏は、このゲリラ的なマーケティングを評価する旨のコメントを述べた。最近、欧州ではECB理事が仮想通貨普及に前向きな発言を行うなど、仮想通貨市場をサポートする流れが生じているが、ブレグジットおよびこれらの仮想通貨関連企業の動きがどのように作用するのか、今後もその展開を見守っていきたい。
release date 2020.02.04
ブレグジットは英国および欧州経済に甚大な影響を与えることが予想されており、各企業がそのリスクに備えている様子がうかがえるが、とりわけ金融業界はこの状況を楽観視しているようだ。特に昨年末頃から外国為替市場では、交渉が難航したことを背景に、英ポンドやユーロを軸とした通貨ペアのボラティリティが上昇し、ブレグジットが取引機会を創出したため、FXブローカー各社にとっては収益を拡大する絶好のチャンスとなった。しかしながら、英国に進出するFXブローカーは、ブレグジットがコスト増となる懸念を抱いており、オペレーションやマーケティングの観点から英国市場にどう対応するかに頭を悩ませているという。仮想通貨市場でもブレグジットが一時的な取引量の増加に貢献すると予想されているが、仮想通貨取引所やウォレットサービス、カストディ企業など、様々な業態の事業者が同様の対応を求められることになると言えるだろう。
作成日
:2020.02.04
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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