作成日
:2020.01.10
2021.08.31 15:29
米国のドナルド・トランプ大統領は、イラクに駐留する米軍に、イランが弾道ミサイルを発射したことに関して演説を行い、イランとの更なる事態の悪化を避ける見方を示した。イランによる米国への報復により、円は3か月ぶりの高値水準で推移していたが、同大統領の発言を受け、リスク選好の流れとなり米ドルは上昇する展開となっている。
トランプ大統領は、即座に追加経済制裁を発動すると共に、イランの姿勢が変わるまで、強力な経済制裁を続けると発言した。同大統領が、軍事力の行使ではなく制裁を科す選択を下し、米イランの緊張が緩和したことにより、安全資産とされる円やスイスフランが下落した。米ドル/円が0.68%高の109.17円前後、米ドル/スイスフランが0.37%高の0.974ドルほどで推移している。また、EU最大の経済大国であるドイツの製造業PMI(購買担当者景気指数)など、経済指標に改善が見られない軟調なユーロに対しても米ドルが上昇し、ユーロ/米ドルは0.34%安の1.111ドルとなっている。
他方で、英国下院総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる保守党が大勝したこと受け、英ポンド通貨ペアは強気相場となっていた。しかし、2020年末にハードブレグジット(合意なき離脱)する懸念が浮上していることから、英ポンドは勢いを失っている状況である。ジョンソン首相は、欧州委員会(European Commission, EC)のウルズラ・フォンデアライエン委員長に対し、英国は2020年12月までとされるEU離脱後の移行期間を延長することはないと伝えている。一方でフォンデアライエン委員長は、2020年以降、移行期間を延長しないことは、新たな貿易取引にリスクを生む可能性があると警告している。また、米イランの緊張が緩和し、中東の原油供給が滞る懸念が後退したことにより、米ドル/カナダドルは0.20%高の1.303カナダドルほどで推移している。その他、主要6通貨に対する米ドルの為替レートを指数化したドルインデックス(ドル指数)は、0.28%高の96.75まで上昇した。
尚、バンクオブアメリカのFXストラテジストであるAthanasios Vamvakidis氏は、米ドルは過去2年間にわたり約10%過大評価されているという。その理由として、減税や関税分野におけるトランプ政権の経済政策に寄与するところが大きいが、11月に大統領選挙を控えており、今後更なる財政刺激策を期待することはできないであろうとコメントしている。2020年は始まったばかりであるが、大統領選挙を見据え、引き続きトランプ大統領の発言に一喜一憂する展開が続きそうだ。
release date 2020.01.10
トランプ大統領は、頻繁にツイッターを用いて自身の意見や姿勢を明らかにしている。日本市場が開く前、もしくは場中にツイートすることもあり、投資家達は、同大統領の発言に振り回される展開が続いている状況だ。そのため、トランプ大統領のツイッターアカウントをフォローする投資家もいるほどである。今後も、11月の大統領選挙に向けて、金融政策を巡りFRB(米連邦準備制度理事会)に対し、頻繁に口先介入することが見込まれるほか、FXブローカーを揺るがす米中貿易戦争に絡んだトランプ大統領の発言も、引き続きマーケットを動かす要因になるであろう。米イラン動向や米中貿易摩擦、ブレグジットの行方など、2020年は様々なリスク要因が存在するなか、世界の政治・経済をリードする米国のトップであるトランプ大統領の言動が与えるインパクトは非常に大きい。グローバルに地政学リスクが浮上するなか、トランプ大統領の動向を注視しながらの神経質な展開が続くことが予想される。
作成日
:2020.01.10
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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