作成日
:2019.12.18
2021.08.31 15:29
12月12日に実施された英国の下院総選挙で、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党が大勝したことを受け、英ポンド通貨ペアは一時急騰する場面が見られた。
同選挙において、保守党は選挙前よりも47議席伸ばし、下院の定数である650議席のうち365議席を獲得した。これにより、ジョンソン政権は、過半数となる326議席を大きく上回る議席を確保し、英国民からの強い付託を得たことで、ブレグジットを推し進めることになる見通しだ。一方で、野党・労働党は59議席を失う惨敗を喫したことを受け、ジェレミー・コービン党首が次回の総選挙を前に辞任することを表明した。今回の総選挙における大敗は、コービン党首率いる労働党が過激な左翼主義の政治マシーンと化したものの、国民の信任を得ることができなかったばかりか、議席を大きく失ったことで労働党の基盤が揺らいでいたことが要因といえるであろう。
他方で、英国総選挙で保守党が勝利を収めたのち、英ポンド/米ドルが一時1.33482ドルほどまで上昇するなど、英ポンド通貨ペアは短期的に強気な相場展開となった。実際に、総選挙前に1.28ドル近辺で推移していた英ポンド/米ドルは、選挙後に0.05ドルも上昇し、投機筋による取引が活発化している模様だ。また、テクニカル指標は明確に強い買いを示しており、指数平滑移動平均線(Exponential Moving Average, EMA)及び単純移動平均線(Simple Moving Average, SMA)の5、10、30、50、100、200日移動平均の全てで買いシグナルが出現している。ただし、相場の強弱や勢いを読み取るオシレーター系のRSI(Relative Strength Index)やコモディティチャネルインデックス及びモメンタムオシレーターは売りシグナルを点灯していることに注意が必要であろう。
FX取引を行う際は、地政学リスクを注視する必要がある。たとえば、2016年6月23日に実施された英国の国民投票で、予想外にもEUからの離脱が決まったことを受け、英ポンド/米ドルが1.48ドルから1.21ドルへ急落したように、政治的要因は各国通貨に大きな影響を与える。また、経済活動コストの変動を表す消費者物価指数(Consumer Price Index)【以下、CPIと称す】もFX相場に影響を及ぼす主要経済指標の一つだ。各国の中央銀行は、物価の安定と完全雇用を目指しているが、CPIへの注目も高まっている。一般的に、CPIがインフレ目標水準を下回ると、該当通貨ペアは即座に売買される。仮に、インフレ率が安定的に上昇すれば、通貨の価値が下落し、弱気相場となる傾向がある。このことから、投機家はインフレ率を見ることで、通貨の価値を判断している模様だ。更に、失業率もFX市場に影響を与える要因の一つである。失業率の低下は、その国の経済の足腰が強くなっていることを示しており、強気相場になる傾向がある一方で、失業率の悪化は通貨を売る要因となり、弱気相場になると捉えられている。
このように、FX取引を行う際には、多くの要因、経済イベント、事象が影響してくることから、FX投資初心者にとっては、相場の方向性を判断する際、マクロ環境を十分に分析する必要があるといえるであろう。
release date 2019.12.18
ジョンソン首相率いる保守党が英国総選挙で大勝したことを受け、同国のEU離脱が2020年1月31日に実現されることがほぼ確定した。しかしながら、足元では同首相がEUとの通商交渉において強硬路線をとる考えを示したことが嫌気された。これを受け、英ポンド/米ドルは総選挙前後の値上がり分を消しており、総じて英ポンド通貨ペアは引き続き高ボラティリティな相場展開となっている。ブレグジットを巡っては、ESMAがECに第三国CCPの監督スキームを提案したほか、FCAが金融パスポート継続措置の利用申請期限を延長させるなど、欧州各国当局が粛々とブレグジット対応策を講じている。また、企業レベルにおいても、ユーレックスがクロスカレンシースワップの中央清算業務を開始するなど、各金融サービスプロバイダーが、ブレグジット後を見据えたサービス体制の強化を推し進めている状況だ。海外FXブローカー及びトレーダーにとっては、ボラティリティの上昇を背景として、引き続きブレグジット動向が多くの取引機会を創出すると予想される。
作成日
:2019.12.18
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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