作成日
:2019.05.24
2022.01.27 13:32
英国の金融監督当局である英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】は、同国政府とEUが加盟国の離脱に関する手続きを定めたリスボン条約50条の適用開始時期を5か月延長したことを受け、2019年1月にFCAが導入した金融パスポート継続措置(temporary permissions regime)の利用申請期間を10月30日まで引き延ばすことを発表した。
金融パスポート継続措置は、英国がEUから移行期間なしの合意なき離脱(ハードブレグジット)をした場合を想定し、同国がEUにとって第三国と見なされたとしても、EEA(European Economic Area、欧州経済地域)諸国の金融機関やファンドマネージャーなどが現行のパスポーティング制度を利用して継続的に英国内で事業を運営することができるようにする一時的な制度である。FCAによると、金融パスポート継続措置は英国がEUから離脱する日から適用開始となり、同制度を利用する金融機関や投資企業は、利用申請に関する電子メールに照会番号を添えて同局へ送信しなければならないとのことだ。その後、金融パスポート継続措置の適用期間中において、英国のライセンスを取得するための申請手続きを行う猶予が一時的に与えられるという。なお、2019年3月下旬時点で、1,000社超の欧州企業が金融パスポート継続措置の活用申請を行ったことが明らかにされており、事業継続性の担保を図るEEA諸国の企業から高い関心が寄せられていることが伺える。
金融パスポート継続措置の利用申請期間の延長に際し、FCA国際部門のエグゼクティブディレクターであるNausicaa Delfas氏は、以下のようにコメントしている。
金融パスポート継続措置の利用申請期間の延長は、ハードブレグジットも含め、ブレグジットの如何なるシナリオも想定したうえでの対応になります。企業にとっても、2019年10月末にハードブレグジットが起きることも含め全てのケースに対し万全の準備をすることが重要であります。そして、ブレグジットに関する新たな情報が出てきたら、金融機関及び投資会社は内容を精査し対応策を練る必要があるでしょう。仮にブレグジット情勢を踏まえたうえで如何なる対策をすべきか判断に迷われる際は、我々のウェブサイト内に掲載されているブレグジットページを参照してください。
Nausicaa Delfas, executive director of international of FCA - FCAより引用
ブレグジット動向に関しては、英国テレサ・メイ首相が党首の辞任を表明したことで、EU離脱を巡る政治的な混迷が一段と高まる可能性が出てきている。ブローカー各社にとっては、ハードブレグジット時の金融パスポート継続措置の活用も含め、様々なケースを想定した万全な対策を講じる必要があるといえよう。
release date 2019.05.24
今月24日、イギリスのメイ首相が保守党党首からの辞意を表明した。ポンドにも影響が及ぶとの懸念があったものの、当日のポンド相場に大きな変動は見られなかった。前日までは、22日に発表された4月のイギリス消費者物価指数(CPI)がイングランド銀行の目標を下回ったことにより、利上げへの足踏みからポンド売りが再燃したものの、連日のEU離脱に関する報道により売り買いが繰り返される乱高下相場だったこともあり、メイ首相の退任は市場も織り込み済みのようであった。 メイ首相の後任として有力視されているジョンソン氏は強硬離脱派として有名であり、「EUとの合意に関わらず離脱期限の10月末に離脱する」との発言でも注目されている。仮に強硬離脱派が選出された場合、市場は合意なき離脱(ハードブレグジット)を見据え、ポンドの下落が想定されるだろう。また、EUは強硬離脱派の新首相との交渉を打ち切り、イギリスの追い出しを進めるとの見方もあるなど、依然として先行きは不透明である。 しかし、EU離脱の決定権は親EU派が過半数を占めるイギリス議会にある。また、EUは離脱協定の見直しはしないと明言しており、合意なき離脱は避けたい意向が強いことは明らかである。合意離脱が大方の予想となる一方、合意なき離脱の可能性もぬぐい切れない市況の中で、ポンド相場は引き続き安値圏にとどまっている。
作成日
:2019.05.24
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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