作成日
:2019.05.24
2021.08.31 15:26
取引プラットフォームの開発を手掛けるフィンテック企業Trading Coresは5月24日、Bundlesと呼ばれる様々な資産を複合した新たなCFDをリリースしたことを明らかにした。
Trading Coresの金融アナリストとの協働で開発された新CFDは、FXや仮想通貨、コモディティ、インデックスなど異なるアセットクラスが融合された単一のCFDとしてシンプルな商品設計になっているとのことだ。そのため、ブローカーはBundlesを取り扱うことで取引量の拡大を、トレーダーは効率的なリスク管理を期待できるという。Trading CoresのチーフオペレーティングオフィサーであるLiron Ivkoviz氏によると、数年間に亘るFX・CFDブローカーとの協働を通じ、多くの経験の浅い投資家が、複雑な金融商品の特徴の理解に苦労していることが明確になったとのことである。そこでBundlesに投資することで、投資初心者が商品性を十分に把握するために要する時間が大幅に削減される結果を得られたと主張している。
また、Trading Coresセールス部門のバイスプレジデントを務めるOri Maizlik氏は、オンライントレードを望む個人投資家は多いものの、投資経験がないもしくは知識が浅いため、商品性を的確に把握し十分な経験を積むには膨大な時間がかかり得るとコメントしている。そこで商品設計がシンプルなBundlesに投資することで学習曲線を大幅に下降させ、トレーダーを繋ぎ止めることが期待できるため、ブローカーにとっては取引量の維持・拡大とマーケティングコストの削減を実現させることが可能になるという。なお、Bundles取引のトライアル後には、多くのトレーダーが新CFDに高い関心を示していることに加え、商品性の理解に苦しむこともないため、結果的にブローカーにとってはマーケティングを通じて比較的容易に顧客を獲得することも期待できるようだ。
欧州当局規制下のブローカーにとっては、Bundlesを顧客に販売するためには金融当局から追加の認可を得なければならないという。例えばキプロスにおいては、投資アドバイス分野の認可も得る必要がある模様だ。足元ではCySECがスタッフを3倍に拡充する計画を示すなど、欧州を始めグローバルに規制枠組み及び監督体制が強化されるなか、ブローカー各社は顧客の維持・獲得に苦慮している状況である。Trading CoresのBundlesを販売するには認可の取得に手間がかかるものの、長期的に見て顧客獲得やマーケティング費用の削減を見込めることから、今後多くのブローカーが積極的にBundlesの取扱いを開始することが期待される。
release date 2019.05.24
FXやCFDの取引に関する規制強化が続く昨今、厳格な監督体制が敷かれることで、より高い健全性が保たれた金融市場の形成が期待される一方、ブローカー各社にとっては顧客の獲得及び満足度向上のために、かつて以上にコストと労力をかける必要性が高まっている。ブローカー各社は、目まぐるしく変わる市場環境において、今後も生き残っていくために顧客との共存共栄を図っており、実際にeToroは株式とETF取引手数料を無料にしており、ActivTradesはプロトレーダー限定のキャッシュバックを実施している。Robinhoodや BUXなどのフィンテック企業も、FXやCFD取引などの取引手数料を無料とするアプリやプラットフォームなどのソリューション開発によって、顧客とウィン・ウィン(win-win)の関係構築を目指している。このように顧客満足度の向上を図る企業が多く存在する中、今回のように初心者トレーダーの立場となって新CFD商品を開発し、販売まで漕ぎつけるということは全ての企業にとって容易なことではないが、顧客獲得やマーケティング費用の削減にも確実に繋がるため、今後ブローカーやフィンテック企業から提供されるサービスに新たな流れを作るきっかけとなることを期待したい。
作成日
:2019.05.24
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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