作成日
:2019.11.22
2021.08.31 15:29
オンライン決済サービス大手のPaypal Holdings Inc.(本社:2211 North First Street San Jose, California
)【以下、ペイパルと称す】が、ブラウザ拡張やオンラインショッピングの際のリワード及び価格情報の提供などを手掛けるHoney Science Corporation【以下、Honeyと称す】と、過去最大の投資規模となる40億ドルで買収に合意したことが明らかになった。2012年に創業したHoneyは、オンラインショッピング時の費用削減に繋がる情報ツールを開発した企業として定評があるほか、過去数年の間に、モバイル版のショッピングアシスタントやリワードプログラム、製品価格のトラッキングツール及びアラート機能なども提供している。また、Honeyは1,700万人のアクティブユーザーを抱え、2018年の1年間で10億ドル以上のコスト削減に寄与したという。
今回の買収を通じて、ペイパルは購買の初期段階からリーチ(見込み客)とコンタクトを図れるようになることから、eコマースの顧客獲得競争において、アップルペイ(Apple Pay)やグーグルペイ(Google Pay)、フェイスブックペイ(Facebook Pay)などの新規参入組のライバルに対し大きなアドバンテージになり得るとコメントしている。他方で、Honeyは今後、ペイパル及び個人間の送金アプリVenmoが保有する2億7,500万口に上る顧客口座と2,400万口のマーチャント口座にアクセスすることができるとのことだ。加えて、2018年に純損益が黒字であったHoneyは、これまで通り企業ブランドを維持すると共に、買収手続きが完了する2020年初頭まで米・ロサンゼルス本社で業務を続ける見通しである。
Honeyの買収に際し、ペイパルのCEOであるDan Schulman氏は以下のようにコメントしている。
Honeyの買収は、我が社の歴史において、事業構造を最も大きく変革し得る案件となります。同社は、消費者の購買行動を単純化させると共に、費用を抑え、リワードを得ることに寄与する包括的なサービスを提供しております。Honeyの消費者向けソリューションと我が社のプラットフォームが融合することで、顧客エンゲージメントを大幅に改善し、消費者の日々の生活において、より重要な役割を果たせると考えております。
Dan Schulman, CEO, PayPal - PayPalより引用
ペイパルはHoneyを買収し、消費者にとっての購買環境の改善に寄与することで、更なる顧客利用の拡大が期待できそうだ。
release date 2019.11.22
1998年に創業したペイパルは、従来の決済サービスと比較してより安全で利便性の高いソリューションを提供し、決済市場において急速にシェアを拡大してきた。しかしながら、同市場にはスクエア(Square)やストライプ(Stripe)などの大手決済プロバイダーだけでなく、足元ではグーグル(Google)やアップル(Apple)に加え、FacebookがFacebook Payを発表するなど、抜群のブランド力と膨大な個人データを強みとするIT大手も、続々と個人向け決済サービス分野に参入してきている。顧客獲得競争が激しさを増す市場環境下において、ペイパルはこれまでの決済サービスに加えて、新たな付加価値を提供することで差別化を図り、顧客の維持・拡大に繋げようとする意図がうかがえる。実際に、ペイパルはiZettleを買収し、実店舗でのペイパル決済の拡大を目指しているほか、ペイパルはTRM Labsに投資することで、仮想通貨関連のコンプライアンスソリューションの活用を模索している。同社が競合他社との差別化を図るべく、プラスアルファの機能を追加することで、今後どれだけ市場シェアを拡大していくか注目したい。
作成日
:2019.11.22
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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