作成日
:2019.11.22
2022.12.23 12:21
野村グループの持ち株会社である野村ホールディングス株式会社(本社:東京都中央区日本橋1-9-1
)【以下、野村証券と称す】は11月22日、過半数の株式を取得する中国の合弁会社の野村東方国際証券(Nomura Oriental International Securities)が、中国証券監督管理委員会(China Securities Regulatory Commission)【以下、CSRCと称す】から証券経営許可証を取得したことを明らかにした。中国当局からライセンスを取得したことにより、野村証券は同国にてブローカレッジサービス、投資コンサルティング、自己売買、アセットマネジメント業務を営むことが可能になるとのことである。また野村証券では、グローバル経営資源を活用し、中国市場で多様な商品・サービスを提供すると共に、アジア戦略の中核をなす総合証券会社を目指していく意向だ。
中国では証券業界における規制緩和が着実に進んでおり、外資系証券が同国で合弁会社を設立することができるようになった。特に2018年8月には、CSRCが外資系証券会社の出資比率を従来の49%から51%に引き上げたことにより、過半出資の合弁企業の設立が可能になっていた。これを受け2018年11月に、中国当局は外資系企業としては初めて、スイスの大手投資銀行であるUBS Group AGに対し、中国の合弁企業UBS Securities Co.,Ltd.への出資比率を51%に引き上げることを認可した。この他にも、野村証券やJPモルガンチェースが過半出資の合弁企業の設立認可を取得している。
野村東方国際証券に関しては、2019年3月に設立認可を取得後、8月に正式な設立に漕ぎつけた。同合弁会社は、野村証券が51%の株式を保有し、上海を拠点とする国営企業の東方国際(集団)有限公司(Orient International (Holding)Co., Ltd.)が24.9%で続き、残りの株式を上海黄浦投資控股(集団)有限公司(Shanghai Huangpu Investment Holding (Group)Co., Ltd.)が取得している。
なお、野村証券はBidFXと提携し、フィンテックを活用したソリューションの開発を強化している。野村証券がCSRCより包括的な証券業務を営むライセンスを取得したことで、中国市場においてフィンテックの活用を含め画期的なサービスを提供し業容拡大を図ることを期待できそうだ。
release date 2019.11.22
2018年4月、習近平国家主席が、証券会社の外資出資比率の緩和や国内外証券会社の業務領域一致など、証券市場に関する対外開放措置を発表した。これをきっかけに、日本を代表する証券ガリバーの野村証券をはじめ、大手グローバル投資銀行がこぞって中国事業の強化を図っている。2019年8月には米最大手の投資銀行であるゴールドマンサックスがCSRCに対し、現地法人の過半出資に向け申請を行うなど、足元では外資系証券各社による中国市場の開拓の動きが活発化している状況だ。更に、中国当局が2020年12月に証券会社の外資出資規制を撤廃すると発表したことを受け、野村証券は100%出資の単独路線による市場開拓を模索している。自国の市場開放を推し進める中国では、上海・ロンドンストックコネクトが開始されており、同国当局はクロスボーダー投資などの拡大を目論んでいる模様だ。他方で、FXCMが豪子会社の中国人顧客をバハマに移管するなど、海外FXブローカー各社も中国当局の動向を注視しており、虎視眈々と中国人顧客の獲得を目論んでいる。着実ながらも市場開放が進む中国市場の開拓を巡り、外資系企業各社によるシェア争いも激しさを増すことが予想される。
作成日
:2019.11.22
最終更新
:2022.12.23
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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