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Advanced Markets、ESMAの規制動向を考察

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update 2022.01.24 17:38
Advanced Markets、ESMAの規制動向を考察

update 2022.01.24 17:38

RTS27とRTS28レポートをウェブサイトに公表する必要性

機関投資家向けFXリクイディティプロバイダー(流動性供給業者)及びプライムオブプライムブローカーであるAdvanced Markets(本社:94 Solaris Avenue, Camana Bay, P.O.Box 1348, Grand Cayman, KY1-1108, Cayman Islands[1])のセールス部門グローバルヘッドを務めるNatallia Hunik氏は、欧州証券市場監督局(European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】の規制策に関する見解を明らかにした。

Natallia氏によると、FX店頭取引(OTC)市場においては、多くの海外FXブローカーが競合他社と同様のカウンターパーティーからリクイディティ供給を受けているはずであるものの、企業同士の関係性を重視することから、必ずしも同じプライシングが提供されていないとのことだ。また、利益相反ルールの遵守やSTP、ECN、ディーリングデスクを介さない取引スタイルといった宣伝文句を掲げた一般的なマーケティング活動と実際の企業行動は大きくかけ離れており、大半のリテールブローカーがクレジットラインを活用できないほか、ティア1(トップクラス)の金融機関に顧客注文を流すことも行っていないという。

更に、多数の海外FXブローカーは第二次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive Ⅱ)【以下、MiFID Ⅱ】第27条にて最良執行義務を定めた規制技術基準(Regulatory Technical Standards, RTS27)を遵守していないように見受けられると共に、中には顧客の資産の安全性や最良の取引条件で執行することよりも、自社にとって金銭的なインセンティブを与えてくれるリクイディティプロバイダー(流動性供給業者)を優先して活用する企業も散見されているとNatallia氏は指摘する。このような海外FXブローカーの動向を踏まえ、ESMAは透明性の高い市場の形成に向けて、MiFID ⅡQ&A集を改訂し、RTS27とMiFID Ⅱ第28条にて投資サービス会社の取引後情報開示ルールを定めた規制技術基準(Regulatory Technical Standards, RTS28)に関するレポートを企業のウェブサイト上に公表することを求めている。

また、レグテック企業のCappitechの調査によると、多くの海外FXブローカーがRTS27に関するレポートを作成していないほか、調査対象の内60%の企業が同レポートを社内における最良執行の検証に用いていないとのことだ。そこで、ESMAはブローカー各社に対し、四半期ごとにRTS27を、そして1年ごとに、且つ公開期間の開始から3か月間以上の遅滞ないRTS28の公表を求めている。加えて、海外FXブローカーはこれらのレポートをファイヤーウォールや登録ページ、パスワードの暗号化などによる制限を受けないウェブサイト内に2年間掲載し続けなければならない。

また、多くの海外FXブローカーが顧客をオフショア市場へ誘導しているが、これらのケースが容認されるのは、投資家がEUを拠点とする子会社のRTS27やRTS28などのレポートを閲覧することができる場合に限られる。加えて、複数のRTS28レポートによると、多くの海外FXブローカーが行う自社の宣伝とは異なり、顧客注文をインターバンク市場に流さず、自らが取引の相手方となる取引スタイルを用いている模様だ。なお各社のRTSレポートは、グーグル(Google)でブローカー名とRTSを打ち込んで検索するか、ブローカーのウェブサイト上のリーガルドキュメントページ内を探すことで閲覧が可能だという。

Natallia氏は、ESMAが具体的なガイダンスを含む詳細なMiFID ⅡQ&A集を作成したことをポジティブに評価している。海外FXブローカー各社にとっては規制の複雑化やコンプライアンス費用の増加といった痛みを伴うものであるが、投資家自身がリスクを見極め的確に投資意思決定を行うことができる透明性の高いサービスを提供することによりFX業界の発展に大きく寄与すると見ている。

release date 2019.09.26

出典元:

ニュースコメント

効率的な規制対応ソリューションを提供するレグテック企業に注目

FCAがFXCM Germanyを詐欺業者と断定したほか、米SECがVeritaseumを起訴し一部資金を凍結するなど、世界的に投資詐欺が横行するなか、各国当局は個人投資家保護を目的とした様々な規制強化策を打ち出している。このような市場環境下において、海外FXブローカー各社は、規制に対応したレポーティングの作成や資金決済、KYC及びAML対策を講じなければならず、労力と費用のかかる新たな業務に忙殺される状況にあると推察される。他方で、ExnessがSumsubと提携したほか、Cappitechが新執行分析ツールをリリースするなど、コンプライアンスやポストトレード業務の効率化を図る画期的なソリューションを提供するレグテック企業が続々と増加してきている。グローバルに規制強化の波が押し寄せるなか、ブローカー各社にとって付加価値の高い規制対応ツールへのニーズは強いと考えられることから、ブローカーのワークフローを一変させるようなレグテック企業のサービス動向に注目したい。


Date

作成日

2019.09.26

Update

最終更新

2022.01.24

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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