作成日
:2019.07.29
2021.08.31 15:30
先日、中国銀行(Bank of China)が、ビットコイン(Bitcoin)の仕組みとその価値が上昇し続ける理由を説明する記事を公式ウェブサイトで公開したことが明らかになった。
この記事の中で中国銀行は、ホワイトペーパーが発表された2008年11月からのビットコインの歴史やその成り立ちをインフォグラフィックを用いて解説しており、2009年に最初のブロックが生成されたことや2010年に米国のLaszlo Hanyecz氏がピザの代金に1万BTCを支払ったことを紹介している。また、中国銀行はビットコインの供給量が2,100万通貨に制限されていることから、希少性が高まってその価値が上昇するメカニズムについても触れており、インフレに苦しめられる国や地域では資産の回避先となる可能性があることを示唆した。これらの情報とは別に中国銀行は、Facebookが仮想通貨プロジェクトのリブラ(Libra)を立ち上げたことを伝えているという。
中国政府が仮想通貨取引やICO(イニシャルコインオファリング)を禁止して以来、国内では厳しい取り締まりが行われているが、今月18日、杭州の裁判所がビットコインを仮想資産(Virtual Property)として認める判断を下した。裁判所の判決によると、仮想通貨を所有することは合法なため、他の資産と同様に法的保護を受ける対象になるようだ。この判例が中央政府の方針に影響を与え得るかは明らかではないが、既に中国国内では仮想通貨が流通しており、現地の違法取引所がテザー(Tether)取引量の約60%を占める状況に陥っているという。
中国の仮想通貨に関する問題はこれだけではなく、2018年末に実施されたある調査では、ビットコインの約60%のハッシュパワーが中国からのものであることが判明しているが、同時に悪質なマイニング事業者による盗電被害が発生していることも指摘されている。報告によると、江蘇省東部の鎮江市で300万ドル相当の電力があるマイニング事業者に盗まれ、当局は同事業者の4,000ユニットのマイニングハードウェアを押収したという。中央政府の思惑とは裏腹に混沌を極める中国の仮想通貨市場だが、成長に向けた市場環境の整備が望まれていると言えよう。
release date 2019.07.29
これまで仮想通貨に対して厳しい対応を見せている中国政府だが、その背景には国内資産の海外流出や通貨発行権の影響力が弱まるとの懸念が生じていたようだ。しかしながら、中国政府は仮想通貨やブロックチェーン技術自体には興味を示しており、先日、Facebookのリブラに対抗する独自仮想通貨を中国人民銀行が開発を進めているとの情報が報道によって明らかになった。13億人もの人口を抱える中国が政府主導の仮想通貨プロジェクトに取り組めば、これまでにない規模で仮想通貨の普及が進むと考えられ、世界的にこの分野でイニシアチブを握ることもできるだろう。仮想通貨の導入が進むベネズエラのペトロの失敗例はあるものの、リブラの様なステーブルコインの形式で発行すれば国内での需要に困ることはない。中国経済の成長率は鈍化を続け、中国政府は仮想通貨や先進ITを次なる成長分野に掲げているだけに、今後も同国の仮想通貨関連の取り組みには注目していきたい。
作成日
:2019.07.29
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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