作成日
:2019.07.29
2021.08.31 15:30
米国の内国歳入庁(Internal Revenue Service)【以下、IRSと称す】が、1万人を超える仮想通貨ユーザーに対し、納税申告を行うよう警告する文書を発行したことが明らかになった。
報道によると、IRSは少なくとも3つのパターンの文書を送付しており、中には税法遵守に関する宣言文への署名を要求するなど、厳しい内容のものも存在することがわかっている。この件に関してIRSのコミッショナーであるChuck Rettig氏は、納税対象者はこの文書を真摯に受け止め、然るべき対応をすべきだとの意見を述べた。近年、IRSはデータアナリティクス技術を活用することで仮想通貨分野における脱税への取り締まりを強化しており、今年初めには申告が必要な仮想通貨ユーザーを特定するためのワーキンググループも立ち上げているという。
過去2年間で、IRSは仮想通貨を保有する個人や企業への監視を強めている。2017年後半には米国の大手仮想通貨取引所であるコインベース(Coinbase)に対して約1万3,000万人の口座情報を開示するように裁判所命令を出し、翌年コインベースはIRSへ個人情報を提供した。今回の文書はその際にIRSが得た個人情報を基に送付されたと考えられるが、当局は税務上の目的で米国内の取引所にユーザーの取引情報を追跡するよう求めており、その他取引所から情報提供があった可能性もある。また、これらの取り組みとは別に、IRSは脱税に関連するマネーロンダリングなどの金融犯罪を捜査するJ5(Joint Chiefs of Global Tax Enforcement)に参画し、国際的な包囲網の構築に力を入れているようだ。
2018年のデータによると、米国での仮想通貨取引による利益申告はごく僅かであったのだが、その原因として、IRSが課税時期や納税方法などを明確にしなかったことが指摘されている。今回、IRSが発行した文書は納税対象者にとって最終通告となる可能性もあり、米国の仮想通貨ユーザーはどのような反応を示すのか、今後の展開に注目していきたい。
release date 2019.07.29
米国での仮想通貨に対する課税は、1年以上の長期保有と1年未満の短期保有で異なる税率が適応されるようになっており、仮想通貨市場の技術開発に貢献する意味合いが大きい長期保有を行う投資家には優遇措置が用意されている。短期保有の場合、総所得額に合わせた7段階の税率が設定され、最高35%の課税となるが、長期保有に対する最高税率は20%に設定されているようだ。これに対して日本では、住民税も含めて仮想通貨取引で得た利益にかかる税率が最大55%と定められていることから、米国と比較しても税率が高すぎるとの指摘があり、国内市場が伸び悩む要因ともなっている。先日、仮想通貨関連団体が金融庁に税制改正を要請し、株取引と同等の水準に税率を引き下げるよう働きかけているものの、当局にとっては直接的な減収につながるため、この案がそのまま採用されることは難しいと言えるだろう。早ければ2020年には税制改正が実現する可能性もあるようだが、今後は金融庁の判断に焦点を当てて状況を見守っていきたい。
作成日
:2019.07.29
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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