作成日
:2019.07.25
2021.08.31 15:30
日本の仮想通貨業界の自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会(Japan Virtual Currency Exchange Association)【以下、JVCEAと称す】および日本仮想通貨ビジネス協会(Japan Cryptocurrency Business Association)【以下、JCBAと称す】が、金融庁(Japan Financial Services Association, JFSA)に仮想通貨に関する税制改正を求めていることが明らかになった。
今月19日、JVCEAは「2020年度税制改正要望書」、同日にJCBAは「2020年度税制改正に関する要望書」を金融庁に提出し、その他の金融商品と同様に仮想通貨に対して申告分離課税の適応を要求しているという。JVCEAおよびJCBAの要求が現実のものとなれば、仮想通貨取引が損益通算や繰越控除、少額非課税制度の対象となり、国内市場における投資拡大の呼び水となる可能性がある。現在、仮想通貨に対する税率は最高55%(所得税45%、住民税10%)となっているが、申告分離課税の下では一律20%(所得税15%、住民税5%)の課税となるため、投資家にとっては大幅な減税措置となる模様だ。
これに関して日本仮想通貨税務協会で理事長を務める岡田佳祐氏は、以下のようにコメントしている。
仮想通貨取引において申告分離課税が実現されることが期待されます。そうなれば仮想通貨取引の活性化に役立つでしょう。そもそも仮想通貨には複雑な税制があり、利用者も困惑している状況であり、多額の税金による負債をもつ方もいます。税制改正により仮想通貨・ブロックチェーン業界へのマイナスの印象が和らぎ、業界が発展することを期待します。
Keisuke Okada, Chairman of Japan Cryptocurrency Tax Association - Coindesk Japanより引用
日本では仮想通貨の法整備が活発になっており、今年5月金融庁は仮想通貨を利用した資金洗浄対策を強化している。更に改正資金決済法や改正金融商品取引法も可決され、仮想通貨の名称統一やデリバティブ商品の規制などは2020年春までに施行される見通しだという。今回提案された税制改正も来年度の成立を目処にしているようだが、日本政府が仮想通貨向け国際決済システムの導入を検討する中、金融庁はどのような反応を示すのか、今後も当局の動きに注目していきたい。
release date 2019.07.25
仮想通貨取引から得た年間20万円以上の利益は、雑所得の区分で申告する必要があり、累進課税で決定する7段階の所得税と10%の住民税を合算した税率が適応される仕組みになっている。このことは、2017年末に国税庁が公開した「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」という文書で公になったが、株取引の利益が譲渡所得に分類されることを考慮すると、当局の見解は完全に納得できるものだとは言い難い。確かに仮想通貨は単なるデータであることから、その存在を定義することが難しいものの、仮想通貨取引がデジタル資産を譲渡する行為だとも捉えることができる。国税庁の言い分として考えられるのは、仮想通貨が資産として認識されていない、または、仮想通貨取引の利益を譲渡益ではなく差益だと判断したということだ。どちらにせよ、当局と仮想通貨コミュニティの税制に関する温度差は大きく、論理的な説明が必要だと思われるが、今回の税制改正の提案に対する回答が仮想通貨市場のこれからを占う試金石となるだろう。今後も当局や仮想通貨関連団体の動向を見守っていきたい。
作成日
:2019.07.25
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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