作成日
:2019.07.19
2021.08.31 15:30
仮想通貨を使ったマネーロンダリング対策(AML)の取り組みとして、日本政府が仮想通貨向けにSWIFT(国際銀行間通信協会)のような国際決済システムの導入を推進していることが、報道によって明らかになった。
日本の財務省および金融庁(Japan Financial Services Agency, JFSA)は、今後数年でこの決済システムを完成させることを計画しており、既に金融活動作業部会(Financial Action Task Force)【以下、FATFと称す】にも承認を得ているという。FATFはこの決済システムを監視する役割を担い、国際的な包囲網を構築することによってマネーロンダリングを未然に防ぐ狙いがあるようだ。しかしながら、分散型ネットワークやブロックチェーンの性質を考えると、ウォレットアドレスさえあれば国際送金が成立する仮想通貨に対し、当局がどのように監視体制を確立するかは依然として明らかにされていない。
日本は、世界でもいち早く仮想通貨に関する法整備を進め、先進的な市場環境を構築してきたが、未だに仮想通貨関連の犯罪に苦しめられている状況だ。昨年のコインチェックのハッキング事件を受け、金融庁も規制強化を実施すると同時に、多数の取引所に業務改善命令を出したものの、今年に入ってもビットポイントがハッキングで大規模な被害に見舞われたことを報告している。金融庁は取引所のライセンス制度を導入しており、事業者の申請に対しても高い基準を持って承認作業を行なっているが、ビットポイントの件で業界全体におけるセキュリティ強化の必要性が浮き彫りとなったと言えるだろう。
この決済システムの導入が現実のものとなれば、仮想通貨の犯罪利用に対する抑止力となるだけでなく、世界的なソリューションとして仮想通貨の普及を加速させる可能性があるが、今後の開発に期待しながら進捗を見守っていきたい。
release date 2019.07.19
取引履歴が公にされているパブリックブロックチェーンでは、その記録からトランザクションを追跡することはそれほど難しくはなく、マネーロンダリングや違法行為などの動きを検出することも可能となっている。特にChainalysisなどの先進企業が開発を進めるブロックチェーン解析ソリューションを用いれば、リアルタイムで膨大な量のトランザクションを監視することも容易に実現できるだろう。しかしながら、KYC(顧客確認)の徹底や国際的な運用スキームが確立されているSWIFTとは違い、ブロックチェーン上の情報だけでは取引に関与した個人を特定するには不十分だと言える。各国政府は法定通貨と仮想通貨の両替が可能な取引所やウォレットサービスなどの事業者を規制することで、犯罪利用を抑止しようとしているが、オフショア地域や後進国との連携も課題となっているのが現状だ。先日、米上院で公聴会が開催されたFacebookのリブラ(Libra)のような仮想通貨であれば、政府主導で統制することも不可能ではないが、多数の仮想通貨に対応するには各国機関が連携することは必須になるといえよう。
作成日
:2019.07.19
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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