作成日
:2019.04.25
2021.08.31 15:26
大手クレジットカード会社のVISAやマスターカードが、グローバルベースでFX・CFD業界への規制強化を継続させている状況だ。クレジットカード会社やGoogleなどのビッグテック、そして各国監督当局が足並みを揃える形で打ち出す規制策の影響を受け、足元ではベラルーシやオフショア市場を拠点とするブローカーが非常に厳しい経営状況に追い込まれている。
2018年5月にマスターカードが無認可ブローカーへのサービスを停止したことに続き、VISAも無認可ブローカーの取締りを強化した。そのため、バヌアツやマーシャル諸島、ベリーズなどのオフショア市場を事業拠点とするブローカーは、顧客に対して決済サービスプロバイダー(Payment Service Providers)【以下、PSPと称す】を通じた十分なサービスを提供できない状況に直面している。またPSPの規制強化の煽りを受ける形で、EUや米国などの厳格な規制枠組みから外れる市場にて事業を営むブローカー各社にとって、カード決済やカード入金処理コストが跳ね上がっているようだ。FXやCFD取引の際、カード決済機能の有無は非常に重要な要素であり、ブローカーのサービス提供に対し大きな影響を与え続けていることから、事態はより深刻なものになっていると言える。
そしてVISAやマスターカードが世界的に推進させている規制策が、ブローカー各社のビジネス環境に与える影響を伺い知るには、ベラルーシ当局の規制下にあるブローカーの動向をモニタリングするのが良いであろう。VISAやマスターカードは、ベラルーシのブローカーに対し、同国外の顧客へサービスを提供することを許可した法的な証明を提出するよう求めている。ただし、ベラルーシの法律では自国のルール及び規制を遵守していれば事業を営むことができる仕組みである。そのため、海外の顧客へのサービス提供ができず、VISAやマスターカードの規制策に不満を募らせるブローカーも出てきている模様だ。なおベラルーシを拠点とするブローカーは、海外の顧客に対し1か月間ほどカード入金サービスを停止しており、それに代わる対応策として銀行送金があるものの、一般的には処理が非常に遅く顧客にとっての利便性が低下する。そのため、顧客が口座から資金を引き出す際に銀行送金手数料を負担するブローカーも出てきているようだ。
他方でオーストラリアは監督当局自ら規制強化に乗り出しており、ブローカーは国外に居住する新規顧客に対しサービスを提供する際、該当地域のライセンス保有を求められている。またEUや英国、米国の規制下にあるブローカーは、ベラルーシからこれらの市場にシフトしてくる顧客に対し自由にサービスを提供することができるため、既存の法律や規制を無視する形となっており、グローバルベースで均一したサービス提供ができない状況である。
FX・CFDブローカー各社は、過去6か月以上に亘り欧州当局の新規制に対応したソリューションの提供を行ってきている。しかしながら、当局が規制の手を緩める気配はなく、今後もブローカーは機動的な対応力が求められる展開が続きそうだ。
release date 2019.04.25
世界中に多く存在するオフショア市場は金融に関する規制が緩く、タックスヘイブン(租税回避地)とも言われており、多くのFX業者やプライベートバンクを始めとした、各国のグローバルな金融機関が集まっている。投資家の間でもオフショア市場を利用したFX取引は効率的な資産運用方法のひとつであると認識されている。しかし近年、マネーロンダリング(資金洗浄)や先進国をはじめとする国々の租税回避地としての注目が高まり、オフショア市場への圧力が強くなっているのが現状である。また人気市場の1つでもあるバヌアツがブローカーへ新規制を公表する等、規制強化の対象になっていることも受けて、オフショア市場の魅力度は年々低下しているようだ。今回のVISA、マスターカードによる規制もそのような市場に対して大きな影響を与えるだろう。今後、オフショアブローカーが如何にして規制を乗り越えていくのか、どのようなマーケティング戦略やビジネスプランを立案していくかに注目していきたい。
作成日
:2019.04.25
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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