作成日
:2018.10.16
2022.11.10 13:43
大手クレジットカード会社のVISAが、無認可やライセンス未取得のブローカーへの取締りを強化させることが明らかとなった。
2018年4月に、同業でクレジットカード会社大手のマスターカードがハイリスク商品の規制や無認可ブローカーへのサービス提供を停止したことが明らかとなって以降、リテールブローカーの間でもクレジットカード業界の次の一手となる規制策に注目が集まっていた。そして大方の予想通り、VISAも無認可ブローカーへの積極的な取締りに乗り出し始めた。これにより、顧客は1年半という十分な期間に亘り、返金請求に関するチャージバックを行うことができるようになる。マスターカードの規制と同様に、VISAも無認可もしくはライセンス未取得のブローカーへの取締りを強化することに加え、該当ブローカーをハイリスクマーチャントとみなすこととしている。この度の新規制により、アクワイアラ(クレジットカードを取り扱う加盟店の管理などを行う企業 )は、ライセンス未取得のリテールブローカーへ必要なサービスを提供することが難しくなることが予想される
VISAがアクワイアラに宛てた通知を精査していくと、いくつかの重要なポイントを確認することができる。まず、VISAが取締りの対象としている事業が、バイナリーオプションと、ローリングスポットFX取引、スプレッドベッティング、CFDであることが分かる。仮にブローカーがこれらの金融商品を取り扱う場合には、賭博業者や宝くじ販売業者、カジノゲーム業者、場外賭博業者、競馬業者と同等とみなされることになる。アクワイアラは、これらの事業を営む企業に対しハイリスクマーチャントコード7995を割り当てるとともに、これらの企業が決済取引を行う前にハイブランドリスクアクワイアラとして登録手続きを行う手間とリスクを負うことになる。また、アクワイアラはバイナリーオプションなどのハイリスクとみなされる金融商品を提供する業者を徹底的に調べることが求められており、VISAやマスターカードによる取締り強化は、トランザクションプロセッサーによるカードホルダーの効果的な管理・監視を行うことにつなげる目的がある。加えてVISAは、アクワイアラに対し、クロスボーダーで不相応な金額に上るバイナリーオプションやローリングスポットFX取引、スプレッドベッティング、CFD取引を手掛ける業者をモニタリングするとともに、これらの取引が禁止されている市場での販売を確認した際は即刻サービスを停止させることを奨励している。なお、サービスを提供する国の当局の規制下にあるブローカーに関しては、VISAが手掛ける規制の対象外となるほか、VISAはマスターカードと同様の規制を12月1日から始める予定である。
VISAとマスターカードによる規制の発表タイミングから勘案するに、EUの新たな規制の枠組みのもとで、顧客保護を目的とした安全対策を講じるため、VISAやマスターカードはGoogleやFacebook、EU当局と協力体制を敷いていることが伺え、VISAやマスターカードによる規制策の効果は、時間の経過とともに発揮されることになるだろう。また、ブローカーとトレーダーはともに、キャップを外しハイレバレッジ取引ができるよう規制を回避する合法的な方策を模索していることから、レバレッジ制限という側面においては、欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority, ESMA)による規制の枠組みは絶大な効果を見せているといえる。一方で、EU当局の規制下にあるブローカーが、規制を回避すべくオフショア市場へ子会社を立ち上げる事象は目覚ましいものがあり、EU当局が今後これらのオフショア法人への資金の流れを制限するか否かについても注目していきたい。
release date 2018.10.16
今回のVISAカードの取り締まり強化は、時期的にも予想通りの展開になったと言えるだろう。 ESMAのレバレッジ規制やマスターカードの無認可ブローカーやICO発行者への規制が発表されたのは、つい最近のことだが、立て続けに発表される規制の下、新しい規制の要求に応えられないブローカーは、閉鎖または合併という道しか残されない状況になる可能性も考えられる。一連の規制発表は、ブローカーにとっては間違いなく大きな打撃を受けることとなるが、顧客保護のためとはいえ、ブローカーだけではなく、投資家へも影響がでるだろう。この厳しい規制を乗り越えて生き残るためには、オフショアブローカーは、継続的に高レバレッジを設定できるメリットなどを生かし、新たなマーケティング戦略やビジネスプランを立て顧客獲得に向けて早急に取り組む必要があるだろう。
作成日
:2018.10.16
最終更新
:2022.11.10
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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