作成日
:2019.01.15
2021.08.31 15:27
先週51%攻撃と呼ばれるハッキング被害を受けた仮想通貨取引所のGate.ioは、不正に流出した10万ドル相当の仮想通貨がハッカーによって返還されたことを今月12日に公式ブログ上で明らかにした。
これまでGate.ioは、ハッカーに連絡を取ろうと試みていたところ、しばらく返答はなかったが、なぜか最近になって仮想通貨の返還があったという。理由は定かではないが、今回、ハッキングを主導したハッカーが、私益のために行為に及んだのではないのであれば、ホワイトハット(ホワイトハッカーのようにハッキング技術を善良な目的に駆使すること)ハッカーとして、仮想通貨で利用されるアルゴリズムの脆弱性を警告する目的があった可能性も考えられる。
今月9日にGate.ioが出した発表によると、ハッカーは、総額で27万1,500ドル相当のイーサリアムクラシック(Ethereum Classic)【以下、ETCと称す】を自身のウォレットに送金していることが確認されているという。つまり、返還された10万ドルを差し引いても、約17万ドル相当の仮想通貨資産がまだハッカーの手元にある計算になる。Gate.ioに攻撃を仕掛けたハッカーが、残りの仮想通貨を直ちに返還しない点を考慮すると、善意での行為だったとは言い難いだろう。結果的に、ETCのネットワーク上の弱点は指摘する形にはなったが、少なくとも一般的に認知されるようなホワイトハットハッカーの類ではない。
ETCへの51%攻撃の影響は、Gate.ioだけに留まらず、今月5日に米国の大手取引所であるコインベースがハッキングでETCへの51%攻撃を受け、同仮想通貨の取引および入出金を停止することを発表している。コインベースは、ETCブロックチェーン上での再編成を確認しており、不正な二重送金が発生したことで、ユーザーへ51%攻撃を受けたことを伝えた。当初、コインベースは被害額を46万ドルと報告していたが、実際には110万ドル相当ものETCが盗まれていることが後に発覚している。
Gate.ioによると、ETCのネットワークは、十分なハッシュパワーを得られていないため、セキュリティメカニズムが正常に機能しておらず、再び51%攻撃を受ける可能性があるとして注意を促している。Gate.ioは、ETCのトランザクションに関して、承認するブロック数を上げる(取引の承認を急がない)ことで対策を打っているが、肝心なETCのネットワークは不安定な状態が続いているようだ。
release date 2019.01.15
これまで、仮想通貨に絡んだ大規模なハッキング事件は、中央集権型の取引所が管理するサーバーを攻撃することで、企業が保有する顧客資産の盗難を狙ったものが主流だった。事実、日本では、昨年1月にコインチェックのハッキング事件、また9月には、Zaifがハッキング被害を受けており、日本の2大仮想通貨取引所をターゲットとしたハッキング事件の発生により、数百億円規模での損失を出している。対策として、金融庁が企業の運営に指導を行うなど、基準を強化することで再発防止に努めており、法規制の整備などと併せて改善が進んでいるようだ。しかし、今回、コインベースやGate.ioが被害を受けた51%攻撃など、ブロックチェーンのアルゴリズムの脆弱性を突くようなハッキングは、仮想通貨の構造的な問題で簡単に回避できる問題ではない。ETCは、比較的メジャーな仮想通貨ではあるが、調べによると、ネットワーク上のハッシュパワーが低下しており、簡単にマイニングリソースの寡占化が起こり得る状態にあったという。大勢のマイナーがネットワークに参加して、うまくマイニングリソースが分散している通常の場合であれば、問題なかったかもしれないが、マイニング収益が低下している現在、このような事件が起きるのは、必然的だったのかもしれない。
作成日
:2019.01.15
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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