作成日
:2019.01.08
2021.08.31 15:27
仮想通貨取引所のCoinbase, Inc.(本社:548 Market St #23008 San Francisco, CA9410
)【以下、コインベースと称す】は、イーサリアムクラッシック(Ethereum Classic)【以下、ETCと称す】が51%攻撃を受けたとして同仮想通貨の取引および入出金を停止することを発表した。今回の51%攻撃は、少なくともBitflyやBlockscoutが提供する2つのブロックチェーン検索ツールで検知されており、今月6日に100以上のブロックが再編成されていることが確認できる。コインベースによると、88,500ETC(46万ドル相当)の不正な二重送金が行われていたという。攻撃がどのくらい継続したかは調査中としているが、Blockscoutは、ETCブロックチェーン上での再編成は、協定世界時(UTC)の1月7日午前2時から5時の間に発生したとを報告している。一方、Bitflyやコインベースは、現在でも攻撃が続いている可能性があることを主張している。
ETCの公式Twitterアカウントのツイートによると、ETCはブロックチェーンのセキュリティソリューション開発を行うSlowMist Technology Co., Ltd.【以下、SlowMistと称す】やその他コミュニティと連携して問題解決にあたっており、それと同時に取引所やマイニングプールには対策を促しているという。
SlowMistはコインベースのセキュリティ開発を担う企業で、7日の朝、ユーザーに対し不審な活動が検知されたことを警告し、更にその発生源の追跡を試みていると伝えていた。コインベースは、他社の報告よりも2日ほど早く、ETCブロックチェーンで再編成が発生していることに気づいていたという。ある仮想通貨メディアのアナリストは、特定のマイニングプールからの異常に高いハッシュレートが検出されており、それがETCのブロックチェーン上での再編成を招いた可能性があると述べている。当初は、Twitterで関係者によって否定されていたが、現在ではETC公式アカウントで51%攻撃の事実を認めている。しかしながら、51%攻撃の定義は曖昧で、今回の件はもっと別の事象だとの見方をしているものも存在するようだ。
ETCの開発アドバイザーであるCody Burns氏は、今回の騒動は51%攻撃と言うよりも一部マイナーによる利己的なマイニング攻撃で、もっと局地的なものだと主張している。Burns氏によると、イーサリアム(Ethereum)のネットワーク全体に再編成の動きが同時に発生していないことから、悪意のあるマイナーがコインベースのETCノードを特定して攻撃を加えた可能性があるという。どちらにせよ、ETC関連のサービスを提供する企業は、顧客保護のための対策を講じることをBurns氏は推奨しており、最良の対策は、イーサリアムベースの仮想通貨取引に関して、承認するブロック数を400ブロック単位以上に設定することだと論じている。
ETC公式のTwitterアカウントでは、膨大なハッシュレートが仮想通貨マイニング機器を製造する企業であるLinzhiから来ていることが指摘されている。確かにLinzhiは、1,400Mh/sものハッシュレートを供給する新製品の開発テストを実施していることは認めているが、同社のオペレーション責任者はそれを事実無根の言いがかりだと否定しており、今回の事件の首謀者による陰謀であるとまで発言している。Linzhiは、未だ最初の製品もリリースしていない状態にあり、ASICのテストはメインネットではなくテストネットを利用することから、ETCに影響を与えた可能性はないと反論している。
今回の大規模な再編成の発生を受けて、大手取引所のKrakenは、ETCによる入金の確認プロセスを強化することを決定し、マイニングプールなどを運営するBitflyも同様の対策を講じることを発表した。米国大手取引所のPoloniexは、ETCに対応するウォレットを一定期間無効化することを決めて、サービス再開までリスク回避に徹することを報告している。
release date 2019.1.8
51%攻撃とは、マイニングの成否がマイナーのコンピュータリソースの多寡に依存するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)などのマイニングアルゴリズムに見られるブロックチェーン上での脆弱性で、特定のマイナーがネットワーク上のハッシュパワーを51%以上占有することで発生する問題である。悪意を持ったマイナーがハッシュパワーを占有することで、誤った送金記録がブロックチェーンに記録される可能性が生まれ、最悪の場合、二重送金による仮想通貨の不正利用が実施される。特にASICなど高効率のマイニングマシン開発が進んでいることから、この問題は顕著化してきているが、イーサリアム系の主要な派生通貨がターゲットとなったことは意外な出来事であると言える。主要通貨としての地位を築いたイーサリアムは、このような51%攻撃のリスクを軽減するためにASIC耐性のあるProgPowという新しいアルゴリズムの導入やPoS(プルーフ・オブ・ステーク)という別のアルゴリズムへの移行を計画している。一時、テストフェイズでの遅れなどが発生したこともあったが、今回のETCの件により、対策とその早期実施の重要性が再認識されたことだろう。
作成日
:2019.01.08
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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