作成日
:2019.01.07
2021.08.31 15:27
今月4日に開催されたイーサリアム(Ethereum)開発者ミーティングにおいて、次期アップデートでASIC耐性の機能が盛り込まれることが暫定的に決定された。
このASIC耐性に関する機能は、新しくイーサリアムで採用されるアルゴリズムであるProgPoWの一部として実装されるという。そもそもASICとは、Application Specific Integrated Circuitと呼ばれるコンピュータチップを中核とした、特定の仮想通貨をマイニングするために特化したハードウェア機器で、高い効率性でのマイニングを可能とするものである。パソコンなどの汎用的なGraphical Processing Units(GPUs)と比較すると、ASIC本体は高価だが、マイニングで収益を上げることに関してはGPUsとは比べ物にならないほど優秀だ。近年、マイニング企業などの台頭でASICによるマイニングが主流となっているが、イーサリアムのように計算量の多寡でマイニングの成否が決まるPoW(プルーフオブワーク)アルゴリズムを採用するイーサリアムの様なシステムでは、マイニングパワーが極わずかなマイナーに集中する、中央集権化による機能不全を招く要因となっている。
この状況を改善するために、イーサリアムの開発者たちは、ProgPowの導入によってASICマイニングへの耐性を高めることで効率性を意図的に落として、反対にGPUsのマイニング効率を向上させることを検討している。マシン性能が低いGPUsでのマイニングが有効になれば、必然的にマイニングパワーの分散化が促進され、正常な仮想通貨システムが持続することが考えられる。
イーサリアム開発のセキュリティ担当者であるMartin Holst Swende氏によると、今回のアップグレードは最終的にイーサリアムのアルゴリズムをよりマイナーへの負担が少ない PoS(プルーフオブステーク)に移行するために必要なステップになるという。現在のイーサリアムでは、計算量を基にするマイニング方式が脆弱性となっていることが指摘されており、Swende氏は、その改善やPoSへの移行に猶予を与えるためにも、一刻も早いProgPowの実装を促している。
ProgPoWの開発者でイーサリアム財団に所属するHudson Jameson氏は、今回実施された開発者ミーティングで、ProgPowの実装に関してほとんど反対を受けなかったことを報告している。それと併せて、Jameson氏は、テストネットでの試験では良好な結果を得ているとしている。ちなみにテストネットは、ブロックチェーン上で開発者がシミュレーションを実施するバーチャル環境で、Gasと呼ばれる手数料を必要とせずに規格の変更や分散型アプリケーションをテストすることが可能となる。
Jameson氏は、テストやその他の試みで重大な問題が発見されない限りは、ProgPowの実装は遂行されると見通しており、それによりイーサリアムがより完成に近いシステムとして前進することを望むと発言している。
release date 2019.1.7
仮想通貨を支えるブロックチェーンでは、マイニングによりブロックを生成することで仮想通貨取引の履歴をある一定の単位ごとに記録する仕組みになっている。マイニングは、ネットワークに参加するマイナーのコンピュータリソースを利用して実行されるが、現在主流で多くの計算量が求められるPoW系のアルゴリズムではリソース不足による取引の遅延やシステムの停滞が問題となっているという。そこで近年、PoS系のアルゴリズムが注目を集めており、イーサリアムもロードマップでPoSへの移行を表明している。PoSでは、PoWと違って、対象となる仮想通貨資産の保有量と保有期間がマイニングの成功率を左右する要因として評価され、コンピュータの計算量になるべく依存しないシステムの構築が可能となる。つまり、仮想通貨をより多く、より長い期間保有するノードを不正を働くリスクがより低いマイナーとして信頼することで、効率良いマイニングを実現することができるのだ。もちろんPoSにも欠点は存在して、賛否両論あるが、より持続可能なソリューションとしての導入が期待されている。
作成日
:2019.01.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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