作成日
:2018.12.07
2022.06.01 12:49
英国の大手FX・CFDブローカーであるCMC Markets UK plc(本社:133 Houndsditch, London EC3A 7BXFCAの永続的なCFD取引規制策の導入方針に対する声明をそれぞれ発表した。
)【以下、CMCと称す】と、同じく英国・ロンドンを拠点とするFX・CFDブローカーであるIG Group(本社:Worting House, Church Lane, Basingstoke, Hampshire, RG23 8PX, UK )は、12月7日に英国金融行動監視機構(The Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】が発表した、FCAは7日、時限措置として導入した個人投資家向けCFD取引サービスを制限する規制策を永続的なものにする意向を示したが、CMCとIG Groupの声明によれば、仮にFCAによるCFD取引規制が永続的なものになったとしても、業績への影響は既に織り込み済みであるとのことだ。両社は既に伝統的なビジネスモデルからの転換を図っているため、FCAの声明はネガティブサプライズとはならなかったようだ。また、金融業界の一部からは、CFDの永続的な規制措置の延期を求める声が上がっていたが、FCAの声明を勘案するに、実際には新規制策を導入する方針は堅いようである。また、仮想通貨CFDなど複雑なデリバティブ商品を含む永続的な取引規制策の導入に際し、FCAでは企業からのフィードバックを求めていたものの、ブローカー各社から提出された意見書のほとんどが退けられる結果となった。
なお、CMCはFCAによる新規制策は既に想定済みであり、加えて、いかなる複雑なデリバティブ商品も顧客へ提供しておらず、仮想通貨CFD取引からの収入も見込んでいないことから、売上高見通しを変更する考えはないとのことだ。2019年上半期決算を基に、CMCでは仮想通貨CFDは業績に与える影響は軽微であり、仮に取引が禁止されたとしても、ほとんど問題はないとコメントしている。
一方IG Groupも、FCAによる永続的な規制策導入を想定していたことから、業績への影響は見込まれず、売上高予想を維持する意向だ。またIG Groupでは、欧州当局が打ち出す規制枠組みの遵守をコミットすると共に、規制当局の目的である個人投資家保護に向け協働していく方針を示している。加えて、IG Groupのこれまでの経験に基づくと、永続的で適切な規制策が導入されることで、長期的な観点に立った場合には、顧客が利益を生み出せるようになり、コンプライアンスを遵守する企業にとっても収益をもたらすともコメントしている。
さらに、CMCはプロトレーダーにハイレバレッジ取引を継続的に可能とするサービスに注力しており、現在、プロフェッショナルトレーダーに位置づけた顧客層が、会社全体の売上高の40%以上を構成し、機関投資家部門に至っては、売上高の50%がプロフェッショナル顧客が占めている。欧州域外からの売上高は30%に留まっているが、オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)とのパートナーシップ契約を通じ、今後はオーストラリアでのストックブローキング業務の拡大にコミットしていく意向である。一方のIG Groupは米国オフィスを開設して、欧州域外でも市場拡大を図っていく意向が示されており、両社それぞれが売上高拡大に向けた経営戦略を打ち出している。
release date 2018.12.7
FCAが発表したCFD取引規制策の永続化であるが、バイナリーオプションやCFD取引は、高いリスクを伴うため、元来、主に非認可ブローカーの顧客を保護するために取り入れられたものである。FCAの発表は市場でも好意的に捉えられたようだが、CMCとIG Groupにおいては発表された声明の通り、CFD取引規制は想定済みであり、英国二大ブローカーの両社の今後の業績に与える影響は少ないのかもしれない。しかしながら、ESMAの新規制の影響からか、先日発表されたCMCの2019年度上半期決算は低迷している。また、CMCは2019年度売上高見通しを下方修正したことも発表されており、今後の見通しは決して良好とは言えないようだ。様々な規制が強化される中、今回の発表が、両社にとってどのような影響を与えるのか、これからの展開を見守る必要がありそうだ。
作成日
:2018.12.07
最終更新
:2022.06.01
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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