作成日
:2018.12.07
2022.01.27 17:13
英国金融行動監視機構(The Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】は12月7日、2年ほど前に初めて導入計画が示された一時的な措置であるCFD取引規制策
を、永続的なものにする方針である旨の声明を発表した。複数の企業より規制の緩和が望まれていたものの、FCAは当初導入した規制枠組みを変更しない決断を下した。FCAが規制強化を図るのは、一部の企業による不正行為が散見されており、非常にハイリスクな取引が行われているため、投資家保護を強化する狙いがある。CFDばかりかバイナリーオプション取引禁止措置に関しても、永久的に禁止する意向を示している。
FCAは、この度の規制策を講じることにより、英国の個人投資家の年間損失が、CFDに関しては2億6,740万ポンドから4億5,070万ポンドほど減少、バイナリーオプションについては1,700万ポンド低減する試算を打ち出している。FCAがこれらの金融商品に対し非常にネガティブな印象を抱いていることが伺えるとともに、未認可ブローカーによるCFDやバイナリーオプションといった金融商品の提供こそが唯一の問題であるとの認識を示していることも注目したいところだ。
さらにFCAでは、金融機関が個人投資家に提供する複雑なデリバティブ商品群も規制対象に含めており、最大レバレッジ30倍の商品から2倍のものに至るまで、アセットクラスに応じてレバレッジ制限を設けている。FCAでは、2019年第1四半期に、仮想通貨CFD取引に関して検討する予定とのことである。なおFCAは2018年初頭に、デジタル通貨を現物取引に用いることを規制する方針を打ち出したことから、仮想通貨関連商品の取引に関しても、更なる規制強化の方向へ進むことが予想されよう。
永続的なCFD取引規制策を導入する意向を表明したことに際し、FCAのストラテジー・コンペティション(戦略・競争)部門でエグゼクティブディレクターを務めるChristopher Woolard氏は、以下のようにコメントしている。
これまで、数年間から現在に至るまで、監督業務に注力し、企業による不正行為を取締り、公正な取引環境の実現に努めて参りました。そのような経験の中で、我々は、投資経験の浅い個人投資家に対し、未認可ブローカーなどが複雑なデリバティブ商品を設計・提供することに懸念を抱いております。
Christopher Woolard, Executive Director of Strategy & Competition at FCA - FCAより引用
FCAでは、新たに導入する意向のCFD取引規制に加え、先物取引等その他のデリバティブ商品取引に関しても規制強化を図るべきか否か検討しているという。なお、新規制を課せられる企業に対して、CFDとバイナリーオプションは2019年2月まで、その他のデリバティブ商品規制措置に関しては2019年3月まで、広くフィードバックを求めるとのことである。
release date 2018.12.7
ESMAの新規制が導入されてから、一部のトレーダーは、欧州の規制の網にかからないオフショア市場へ移行している。2018年11月頭にESMAがバイナリーオプションの規制期間を延長することを発表し、各国規制当局も永続的なバイナリーオプション取引の規制を行っていく動きが見られている。11月下旬にはドイツ連邦金融監督局(Die Bundesanstalt für Finanzdien Stleistungsaufsicht, BaFin)が、個人投資家向けバイナリーオプション取引提供を永久に禁止する決断を下したことが報じられた。このようなことから、FCAやBaFinといった各国欧州当局は勿論、欧州域内全体をカバーする規制枠組みが、今後も更に強化されることが予想されよう。一方で、バイナリーオプションやCFDの規制が強化されるにしたがって、豊富な選択肢が可能なオフショアブローカーへの資金の流入や、レバレッジ制限のため初期投資が多額となり経済的な負担増などのデメリットも指摘されており、厳しすぎる規制はモラル・ハザードを招く原因となるのではないかとの懸念も上がっている。
作成日
:2018.12.07
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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