作成日
:2018.11.23
2022.06.01 12:55
英国の大手FX・CFDブローカーであるCMC Markets UK plc(本社:133 Houndsditch London EC3A 7BX
)【以下、CMCと称す】は、2018年4月から2019年3月までの2019年度上半期決算を発表した。欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】が導入した新規制の影響を受け、低調な決算に終わったようだ。2018年4月1日から9月30日までの6か月間に亘る2019年度上半期決算において、純営業収益は2018年度上半期の8,960万ポンドから21%減の7,060万ポンドに落ち込んだ。CMCの決算報告書によると、2019年度第2四半期の業績低迷には、市場のボラティリティ低下が続いたことと、ESMAの新規制が導入されて以降の8月、9月に個人投資家の取引が低迷したことなど、主にこれら2つの要因が大きく影響したようだ。
収益が落ち込む一方で、営業費用に関しては、2018年度上半期の5,930万ポンドから6%増となる6,270万ポンドに増加しており、これは主に株式ブローキング業務への投資とCMC社員の固定給が増加したことが要因として挙げられる。一方、利益に関しては、税引き前利益が前年同期比76%減の720万ポンドにまで大きく落ち込む結果となった。ただし、取引回数に関しては、第2四半期にESMAの新規制の影響を受けたものの、2018年上半期の3,070万から14%増の3,490万回に増加し、売買代金も4%の微増となった。
2019年度上半期決算の発表を受け、CMCのCEOであるPeter Cruddas氏は以下のようにコメントしている。
2019年度第1四半期の取引高に関しては、前年同期比を上回ることができましたが、お伝えしております通り、第2四半期は非常に厳しい四半期でありました。ボラティリティ低下により、主要アセットクラスに関しては、非常に狭いレンジでの取引を余儀なくされました。更に8月1日からはESMAの新規制の影響もあり、2019年度上半期の税引き後利益は前年同期比で大幅減少という結果に終わっております。しかしながら、我が社は下半期に収益を大きく上げる傾向にあります。また、市場環境が改善の兆しを見せ始めている他、喜ばしいことに、リテール、プロフェッショナル顧客、機関投資家のそれぞれの顧客カテゴリーにおいて取引が増加してきております。
Peter Cruddas, CEO of CMC - FINANCIAL TIMESより引用
今後CMCは、株式ブローキング業務の更なる収益の押し上げにより業績を下支えする見込みであるという。CMCがどれだけの挽回を見せるのか、下半期決算が非常に楽しみである。
release date 2018.11.23
CMCにとって第2四半期の低迷した結果は想定内だったのだろうか。8月にESMAの新規制が導入されてから3カ月が経過するが、Peter Cruddas氏が言うように、下半期に入って市場は改善の兆しを見せているようだ。CMCはFinancial Statements 2018の中でESMAの規制導入により、より透明性の高いサービスの提供が可能となれば、顧客増加につながることは間違いないという見解から、CMCはそういった環境の中でより優れた取引プラットフォームと付加価値の高いサービスを顧客に提供することを明確にしている。一方、顧客は規制による環境の変化に伴い、取引手法を変えたり、見直したりする期間が必要となることを想定し、その間、業績に大きな影響があることも織り込み済みであったようだ。第2四半期は欧州のどのブローカーにとっても厳しい決済期間となったが、市場が回復を見せる中、いよいよCMCの快進撃が始まろうとしている。今月初めにCMCはIRESSと提携し、9月にリリースした機関投資家向け取引プラットフォームをより利便性の高いトレード環境に改善したことを明らかにするなど、事業戦略の柱でもある機関投資家向け事業の強化も着実に行われていることが伺える。また、CMCは ANZ Bankとの業務提携によりオーストラリアでのビジネス拡大も狙っており、業績回復に向けた下準備は万端とも見れる。9月にCMCは2019年度の売上高見通しを下方修正しているが、市場回復の兆しはCMCに大きなチャンスをもたらす可能性は大きいだろう。上半期で行った投資をどれだけ回収することができるのか、下半期のCMCの飛躍に期待したい。
作成日
:2018.11.23
最終更新
:2022.06.01
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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