作成日
:2023.10.10
2023.10.13 17:19
仮想通貨(暗号資産)のデペッグとは、仮想通貨価格が基準価格から大きく乖離することを指します。リスクになることが多く、基本的に市場にとって好ましいものではありません。
当記事では、デペッグの意味や発生する要因、過去の事例について解説します。
仮想通貨(暗号資産)のデペッグとは、特定の法定通貨等と固定的な価格関係(ペッグ)にある仮想通貨において、価格が基準値から大きく逸脱することです。
ペッグしている仮想通貨の例として、USDTなどのステーブルコインが挙げられます。
USDTの場合、1USDT=1米ドルとなるようにデザインされています。ステーブルコインが必要な理由は、いくつかあります。
ペッグされた仮想通貨は、他の仮想通貨に比べて価格が安定しており、日常の取引でも使いやすいです。
デペッグは、価格が特定の資産に連動している仮想通貨(暗号資産)で発生します。
一般的にはステーブルコインが該当しますが、それ以外の一部の仮想通貨でもデペッグのリスクがあります。
ステーブルコインは、安定した価格変動を目指す仮想通貨で、米ドルなどと1:1の価格関係が維持されるように設計されています。
何らかの理由でペッグが機能しなくなると、仮想通貨価格はペッグ対象の資産価格から離れていきます。
ステーブルコイン以外でデペッグのリスクがある仮想通貨として、stETHなどのリキッドステーキングトークンが挙げられます。
リキッドステーキングトークンとは、ステーキング期間に引き出しできない仮想通貨について、流動性を確保するために独自に発行されるトークンです。Lidoの「stETH」やRocket Poolの「rETH」などが該当します。
これらのトークンは、元となる資産(stETHの場合はETH)に対して1:1の比率で価格が連動します。しかし、こちらも何らかの理由でデペッグが生じる可能性があります。
なお、ビットコインやイーサリアムなどの主要な仮想通貨は、特定の資産にペッグされていないので、デペッグは発生しません。
デペッグが発生する原因は多岐にわたります。実際に起きた事例を見ると、過去のデペッグの原因には似通ったものが多く見られます。
しかし、理論上はさまざまな事象がデペッグの原因になるため、ここでは起こりうる原因について網羅的に解説します。
仮想通貨(暗号資産)取引所や大手銀行の破綻などが発生すると、パニック売りや大量の資金の引き出し要求が起きることがあります。
これらがステーブルコインの売り圧力を上昇させ、デペッグになる可能性があります。
ステーブルコインは、担保資産の存在を前提に設計されています。担保資産の不透明さにつながる噂が流れると、ユーザーの信頼を失ってデペッグが起こる可能性があります。
各国政府がステーブルコイン規制を強化したり、取引所で上場廃止になったりすると、流動性や信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
DAIなどの仮想通貨担保型ステーブルコインの場合、担保資産である仮想通貨の価格が急変すると、ステーブルコインの価格にも影響が及ぶ可能性があります。
これは、担保資産の価値が下落することで、ペッグの維持が困難になるためです。
なお、法定通貨を担保にしているステーブルコインの場合、法定通貨の価格が急変することは少なく、デペッグにつながることもほとんどありません。
ステーブルコインには、アルゴリズム型と呼ばれるものがあります。
これは、担保資産を持たず、アルゴリズムによって価格安定を図るステーブルコインです。アルゴリズムが崩壊すると、大幅なデペッグが起こる可能性があります。
実際にデペッグが起きた事例として、USTがあります。
実際にデペッグが起きた事例について、価格変動の様子をチャートで確認しながら紹介します。
画像引用:CoinMarketCap
USDTは、米テザー社が発行するステーブルコインです。2022年11月にデペッグし、価格が下落しました。
このデペッグの原因となったのは、大手仮想通貨(暗号資産)取引所FTXの破綻です。
FTXへの出資・関与を疑われたテザー社は、関係を否定しました。しかし、ユーザーはFTX破綻からのリスク伝染を恐れ、USDTを米ドルに換金しました。
その結果、USDTの価格は下落し、仮想通貨取引所クラーケンでは最大で約7%下落しました。
画像引用:CoinMarketCap
USDCは、米サークル社が発行するステーブルコインです。2023年3月にデペッグが発生しました。
この原因は、米銀行の相次ぐ経営破綻です。サークル社はUSDCの準備金の一部を、経営破綻したシリコンバレー銀行に預けていました。
その結果、ユーザーの間でUSDCに対する信用不安が生じ、デペッグが発生しました。
画像引用:CoinMarketCap
USTは代表的なアルゴリズム型ステーブルコインでした。しかし、2022年5月にデペッグして以降、価格は元に戻っていません。
USTは、仮想通貨LUNAを用いるアルゴリズムを組んでいました。このアルゴリズムでは、片方の通貨に極端な買いや売りが入ると、需給バランスが崩れる恐れがあります。
USTのケースでは、まずUSTが大量に売られ、それに引きずられる形でLUNAの価格も大暴落することでアルゴリズムが破綻し、USTの大幅なデペッグを引き起こしました。
この崩壊を引き起こしたきっかけは、DeFiプロトコル「Anchor」からの多額の預り金(UST)の引き出しでした。
巨額のUST引き出しに他のユーザーが不安を覚え、次々とUSTが売り込まれた結果、アルゴリズムは崩壊し、復元不可能なデペッグにつながりました。
画像引用:CoinMarketCap
リキッドステーキングトークンであるstETHの価格は、1:1の比率でETHに連動しています。このため、上のチャートも対ETHの価格推移です。
2022年6月、stETHの価格はデペッグしています。これは、大手仮想通貨レンディング企業のCelsius Networkの経営破綻の影響で、stETHの売り圧力が強まったことによるものです。
デペッグの発生時期を正確に予測したり、リスクを完全に回避したりすることはほぼ不可能です。しかし、リスクの内容を把握し、対策を講じることはできます。
その方法のひとつは、ポートフォリオの分散化です。
値動きが比較的安定しているステーブルコインですが、特定の銘柄だけ保有することはリスクがあります。複数の仮想通貨に分散することで、特定の通貨のデペッグによる影響を軽減できます。
また、定期的な情報収集や市場動向のチェックも重要です。
デペッグが起こる場合、その背後には担保資産や管理組織の透明性、規制動向などが影響しています。関連する企業の動きなども含めてチェックをすることで、リスクを早期にキャッチできます。
デペッグは、必ずしもすべての仮想通貨について起こるわけではなく、頻繁に起こるものでもありません。
しかし、ユーザーが価格安定性を過度に信じる場合、ひとたびデペッグが起これば大惨事につながる恐れがあります。リスクを正しく把握し、市場動向や関連情報の収集を怠らないように心がけましょう。
作成日
:2023.10.10
最終更新
:2023.10.13
2017年に初めてビットコインを購入し、2020年より仮想通貨投資を本格的に開始。国内外のメディアやSNSなどを中心に、日々最新情報を追っている。ビットコインへの投資をメインにしつつ、DeFiを使って資産運用中。
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