Select Language

アルゴリズム系ステーブルコインの脆弱性が話題に!DAIの安全性は?

アルゴリズム系ステーブルコインの脆弱性が話題に!DAIの安全性は?

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.05.16 16:03
アルゴリズム系ステーブルコインの脆弱性が話題に!DAIの安全性は?

update 2022.05.16 16:03

ビットコイン(BTC)など仮想通貨(暗号資産)は価格が安定せず、実用性に乏しいと指摘されてきました。この問題を受けてステーブルコインが開発され、価格安定の期待を集めてきました。しかし、2022年5月初旬、アルゴリズム型ステーブルコイン「UST」の価格が崩壊したことをきっかけに、仮想通貨市場全体に不安が広まりました。

USTは、USDT(テザー)やUSDC(USDコイン)に次ぐ規模だったため、衝撃の出来事となりました。では、その他のステーブルコインの安全性は保たれているでしょうか。当記事では、DAIなどステーブルコインの安全性について焦点を当てます。

UST問題が波及

USTは、テラ(Terra)ブロックチェーンで発行されるステーブルコインです。特徴としては、USTを発行するために米ドルなどの法定通貨を必要とせず、裁定取引の原理を利用して価格安定性を保つことが挙げられます。また、1ドル分のLUNAを使って1USTを発行・償還することが可能で、市場価格の変動に対してトレーダーが低いリスクで利益を得られる仕組みでした。

point 裁定取引

裁定取引とは、同じような価値を持つ商品等の一時的な価格差を利用する取引手法です。何らかの理由で一方の商品等が理論値よりも高くなる場合、市場参加者はその商品を売ると同時に、割安になっている側を買います。すると、割高な側の価格は下落し、割安な側の価格は上昇して元の安定的な価格に戻ります。こうして、これら2つの価格は安定的に推移します。

USTは、アルゴリズム型ステーブルコインとして価格が安定していました。しかし、DeFi関連サービスからの大規模な資金引き上げや、取引所での大量の売りが引き金となり、突如として安定性を失いました。当記事執筆時点で、UST価格は0.2ドルを割っています。また、トークン「LUNA」がUSTの価格安定のために利用されており、80ドル付近だったその価格は0ドル台まで暴落してしまいました。

USTと米ドル価格のチャート

画像引用:CoinMarketCap

仮想通貨市場では、複数のステーブルコインが大きな影響を受けました。ステーブルコインの中でも、法定通貨に価値を裏付けられたものは、比較的安定していました。しかし、その他のステーブルコインには、少なからずネガティブな動きが観測されています。例えば、アルゴリズム型ステーブルコイン「USDN」が精彩を欠いており、一時的に0.7ドル付近にまで急落しました。

当記事執筆時点で、USDNを含め価格が崩壊したステーブルコインの例は報告されていません。しかし、仮想通貨市場全体で安全性への懸念が高まっているのは事実でしょう。

DAIの安全性は?

では、DAIの安全性について確認しましょう。DAIは、MakerDAOというDAO(分散型自立組織)が管理するステーブルコインです。また、日本の取引所で売買可能なため、日本のユーザーの関心が高いステーブルコインです。

DAIの仕組み

DAIは、仮想通貨を担保にしています。担保に使用できるのは、イーサリアム(ETH)やビットコイン(BTC)など主要な仮想通貨に加え、ユニスワップ(UNI)やマナ(MANA)などもあり、これらと引き換えにDAIを発行できます。そして、USTとLUNAの関係と異なり、等価交換でDAIを発行できるわけではありません。担保となる仮想通貨毎に「最低担保比率」が設けられており、その基準を満たす範囲内でDAIを発行可能です。

例えば、イーサリアムの最低担保比率は170%に設定されています。すなわち、1,000ドル相当のDAIを発行するには、最低でも1,700ドル相当のETHを担保として預け入れる必要があります。さらに、ETH価格が下落して最低担保比率を維持できなければ、強制決済されてしまいます(DAIからETHに戻されます)。この強制決済が発生する場合、仮想通貨が割安な価格で売却されてしまう上に、ペナルティとして罰金が科せられるようになっているので、余裕を持った発行が推奨されています。

イーサリアムにおける最低担保比率

DAIが抱えるリスク

DAIは、この仕組みで安定性確保に成功しています。2020年に価格が乱高下することもありましたが、2021年以降は安定的な値動きを見せています(下のチャート)。しかし、DAIにも、価格崩壊のリスクが潜んでいます。

DAIと米ドルの価格チャート

画像引用:CoinMarketCap

最大のリスクは、担保となる仮想通貨価格の急落です。DAIの最低担保比率は150%以上に設定されているので、たいていの価格変動に耐えられます。しかし、想定を超えるスピードで暴落が発生した際には、システムを維持できなくなる可能性があります。仮想通貨には1日で無価値になってしまうものも存在するので、可能性はゼロではありません。

また、ハッキング被害を受けるリスクもあります。スマートコントラクトの脆弱性への攻撃などに対処するため、「緊急時シャットダウン」と呼ばれる対策が用意されています。しかし、セキュリティが侵害されれば、DAI価格へのマイナス影響は避けられないでしょう。

しかしながら、DAIはアルゴリズム型ステーブルコインよりも強固なシステムを持っており、USTと同様の被害を受ける可能性は比較的低いといえるかもしれません。

その他の主要なステーブルコイン

一般的に、ステーブルコインは法定通貨を担保にする方法が主流です。この種のステーブルコインはUST問題で致命的な影響を受けていない模様ですが、その安全性は確保されているでしょうか。

USDT

USDTは、テザー社が発行する世界最大のステーブルコインであり、米ドルとの連動性が高いです。安定性の肝は準備金の管理であり、第三者機関による監査で透明性を保っています。しかし、過去には監査基準の曖昧さや準備金の運用方法に対して懸念の声が挙がるなど、不安要素も存在します。

2022年時点において、準備金の30%超がCP(コマーシャルペーパー、無担保の約束手形)と譲渡性預金に割り当てられており、安全性に対する懸念が再燃しています。このCPに関して、契約企業などの詳細は公開されていません。準備金の半分以上が米財務省証券と現金であるため、直ちに流動性の問題が発生するわけではないと考えられますが、USDTの償還が急増すれば、テザー社の準備金運用の信頼性が問われることになるでしょう。

テザー社は、準備金におけるCP比率引き下げ開始を報告しており、USDTが健全なステーブルコインであることをアピールしています。USTが暴落した際にも、テザー社はUSDTの償還に通常通りに対応していることを発表しました。

USDC

USDCは、Circle社によって2018年に立ち上げられたステーブルコインであり、Circle社は米大手取引所Coinbaseと米大手証券会社ゴールドマンサックスを後ろ盾に設立されています。USDTと同様の仕組みで米ドルとの連動性を保っており、非常に高い信頼性があります。特に、Coinbaseは米証券取引所のNASDAQに上場しており、USDCの価値を裏付ける準備金の運用は強固なものであると考えられます。

なお、米企業が主体となって運用する仮想通貨であるため、米政府機関の意向に左右される可能性があります。米国では、ステーブルコインの規制の動きが加速しているだけでなく、中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)などの開発も進んでおり、USDCを始めとするステーブルコインを取り巻く環境の変化に注意が必要です。米証券取引委員会(SEC)がUSDCによる金融サービスに警告を発するなど、既存の金融システムとの摩擦が生じているのも事実です。

BUSD

BUSDは、大手取引所Binance(バイナンス)が発行するステーブルコインであり、Binanceのサービスだけでなく、BNBチェーン上で広く利用されています。他の中央集権型のステーブルコインと同じく、裏付けとなる準備金の内訳を公開しています。

また、BUSDはBinanceに左右される存在です。Binanceは複数の国でライセンスを保有していますが、米国などではBinance.comへのアクセスが制限されるなど、いくつかの国で利用が禁止されています。このライセンス問題の解決には、時間を要する見込みです。従って、BUSDやBNBチェーンは、規制面でのリスクを少なからず抱えています。

USTの影響は限定的

当記事執筆時点において、USTの価格崩壊による他のステーブルコインへの影響は、限定的だったといえます。法定通貨担保型のステーブルコインや仮想通貨担保型のDAIは、その安定性を維持しました。USTはアルゴリズム型のステーブルコインであり、実験的な試みだったとの考えもあります。これがステーブルコインの将来性にどのような変化をもたらすか、もう少し時間をかけて推移を見守る必要がありそうです。


Date

作成日

2022.05.16

Update

最終更新

2022.05.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

仮想通貨USUALの将来性は?RWA活用のステーブルコインプロトコルを解説

仮想通貨USUALは、ステーブルコインプロトコル「Usual」のガバナンストークンです。Usualは、BlackRockなどからRWA(現実資産)を集約してステーブルコインを発行し、その収益をコミュニティに再分配するプロトコルとして注目を集めています。
update2024.11.20 20:00

Milton Marketsが2024年11月より最大100%分入金ボーナスを開催

Milton Marketsで期間限定の100%入金分ボーナスキャンペーンが開催されます。当記事では100%入金分ボーナスの概要や、注意点を中心に解説していきましょう。
update2024.11.20 19:30

スマホ版MT4のやさしい使い方ガイド~iPhone&Androidの基本操作~

この記事では、優先的に押さえておきたいMT4アプリの機能を5つのグループにまとめ、iPhone版とAndroid版での使い方を解説します。「基本操作を手っ取り早く確認したい!」という方はぜひご活用ください。
update2024.11.20 19:00

ZoomexがクリプトバトルZを開催!毎週開催の取引大会で現物USDTやボーナスを獲得

2024年11月1日、海外取引所のZoomex(ズーメックス)が、取引大会シリーズ「クリプトバトルZ」を開催しました。ラウンドごとの特典総額は3,480ドル相当です。当記事では、クリプトバトルZの詳細や参加方法、注意点を解説します。
update2024.11.15 20:00

ゴールドラッシュXMは本当に儲かるのか?ほぼ破綻リスクゼロのEAの実力は

ゴールドラッシュXMのランディングページで謳われている「1ヵ月で取引資金が2倍に」、「破綻リスクはほぼゼロ」という宣伝文句に違わぬ実力が備えられているのか、フォワードテスト・バックテストを実施して検証しました。
update2024.11.14 20:30

Titan FXがブラックフライデーキャンペーンを開催!取引でキャッシュバックが付与

Titan FXが、2024年11月25日(月)からブラックフライデーキャンペーンを開催します。今回のキャンペーンでは、FX通貨ペア銘柄またはゴールドを1ロット取引するごとに500円のキャッシュバックが付与されます。
update2024.11.14 20:00

XMTradingが仮想通貨CFDのスプレッドを縮小!どのくらい狭くなったか検証

2024年10月25日にXMTradingが仮想通貨CFDのスプレッドを縮小しました。この記事では、BTCUSDとETHUSDのスプレッドの計測結果やほかのFX業者と比較した結果を解説します。
update2024.11.14 19:30

Milton Marketsが11月の1万円FXチャレンジとXリポストキャンペーンを開催!

Milton Marketsで、11月の1万円チャレンジが開催されます。この記事では、開催期間や上位入賞の条件、これまでの1万円チャレンジと変わった点などを解説します。
update2024.11.14 19:00

XMTradingがお歳暮プロモを開催!100%入金ボーナスを付与

海外FX業者のXMTradingが2024年10月15日から11月15日までお歳暮プロモを開催することを発表しました。キャンペーン期間中に対象口座へ入金すると、100%の入金ボーナスが付与されます。新規・既存ユーザーの両方が対象です。
update2024.11.12 19:30

Zoomexがあったか冬支度応援キャンペーンを開催!総額76万円相当のビットコインとAmazonギフト券がもらえる

Zoomex(ズーメックス)が、あったか冬支度応援キャンペーンを開催しました。各種条件をクリアすると、総額76万円相当のビットコインとAmazonギフト券を獲得できます。キャンペーン開催期間は、2024年11月19日〜11月25日までです。
update2024.11.07 19:30
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル