作成日
:2023.09.08
2024.01.03 04:25
仮想通貨(暗号資産)の運用方法の一つに、価格の上下動を狙って売買する方法があります。しかし、価格の予想はプロでも難しく、想定と逆に動けば大きな損失を被ることもあるでしょう。
そこで、値動き以外に着目して稼ぐ方法に注目が集まっています。具体的には、レンディングとステーキングです。これらの運用方法は、預け入れる(貸し出す)だけで報酬が得られるという共通点がある一方で、特有のメリットやリスクがあります。
そこで、当記事では、これらサービスの特徴や、運用できる場所などを解説します。
レンディング(lending)は、仮想通貨(暗号資産)を貸し出して報酬を得るサービスです。
貸し手は仮想通貨を貸し出し、対価として貸借料を受け取ります。逆に、仮想通貨を借りることもでき、この場合は貸借料を支払います。
レンディングは安定的なリターンを得られますので、長期運用に向いています。そして、仮想通貨価格が上昇したら、売却して差益を得ることもできます。
レンディング可能な仮想通貨の種類は多く、USDTなどのステーブルコインでも可能です。ステーブルコインでレンディングすれば、価格変動リスクを抑えながら稼げます。
CEX(中央集権型取引所)などでレンディングをする場合、CEXが経営破綻すると、貸し出した仮想通貨が手元に戻らない可能性があります。
これは国内取引所でも同様です。口座内で保管する場合は、国内取引所が経営破綻しても全額返還されます。しかし、レンディングは分別管理の対象外のため、経営破綻時に返還されるかどうか分かりません。
また、DApp(分散型金融)のレンディングにも、リスクがあります。DAppはスマートコントラクトによって制御されており、ハッキング被害に遭うと、仮想通貨が盗まれてしまう可能性があります。
スマートコントラクトは、契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。
その他、貸借料が低下するリスクもあります。貸借料の年率は、仮想通貨の需要と供給によって決まります。貸し出している仮想通貨の需要が減少したり、供給が増加したりすると、想定していたリターンを確保できないかもしれません。
また、レンディングサービスによっては、資金の返却に時間がかかる場合もあり、そのタイムラグがリスクとなります。
ステーキング(staking)とは、仮想通貨(暗号資産)を一定期間ロックアップして報酬を得る仕組みです。ロックアップ期間中は、その仮想通貨を送金したり売却したりできません。そして、ステーキングには2種類の意味があります。
本来、ステーキングとは、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)系のブロックチェーンにおけるブロック承認プロセスを意味します。対象の仮想通貨を預け入れてバリデーターになれば、ブロックの生成に貢献して報酬を獲得できます。
PoSはブロック生成ルールの1つです。ビットコイン(BTC)などが採用するPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と比較して、電力消費が少ない点や拡張性が高い点などで注目されています。
また、バリデーターにならなくても、バリデーターに委任することでブロック生成に参加して報酬を得ることもできます。一般のユーザーは、主にこちらの方法でステーキングに参加します。
もう一つの意味のステーキングは、CEXやDappに仮想通貨を預け入れ、その対価として報酬をもらうことです。ステーキングよりもレンディングに近い仕組みです。
ユーザーに仮想通貨の長期保有を促す効果があり、様々なプロジェクトで採用されています。
本来の意味のステーキングは、ブロックチェーン自体の仕組みであって、取引所と関係ありません。このため、ブロックチェーン上で直接参加できますし、取引所経由で参加することもできます。
また、メジャーな仮想通貨のステーキング報酬は、おおむね年利10%以下に設定されており、レンディングよりも高利率という特徴があります。
さらに、リキッド・ステーキングなどで運用を効率化することもできます。
ステーキングに参加するには、仮想通貨をロックアップします。そして、いつでも自由にロックアップを止められる場合もあれば、ロックアップ終了手続きから実際に手元に仮想通貨が戻るまでに1週間以上の時間を要する場合もあります。
このため、ステーキング実行中に仮想通貨価格が下落すると、損失額がステーキング報酬を上回るかもしれません。
また、バリデーターに委任してステーキングする場合、バリデーターがルール違反を犯すとペナルティが課され、仮想通貨を没収されてしまう可能性があります(スラッシング)。
スラッシングとは、バリデーターがルールに違反した場合、そのバリデーターが預けた仮想通貨を没収する仕組みです。スラッシングはバリデーターだけでなく、委任したユーザーも対象となります。
各運用方法の違いをまとめると、以下のとおりです。
項目 | レンディング | ステーキング |
---|---|---|
報酬の原資 | ・貸借料 | ・ブロック生成への貢献に対する報酬 |
利回り水準 | ・10%未満 | ・数%〜数十% |
メリット |
・安定的なリターン
・通貨の種類が豊富でステーブルコインでも運用可能
|
・ブロックチェーン上で直接参加可
・リキッド・ステーキングなどで運用効率化
|
リスク |
・ハッキングリスク(Dapp)
・カウンターパーティリスク(CEX)
|
・ロック期間
・スラッシング
|
難易度 | ・初心者〜上級者 | ・初心者〜上級者 |
報酬の原資
レンディング | ・貸借料 |
ステーキング | ・ブロック生成への貢献に対する報酬 |
利回り水準
レンディング | ・10%未満 |
ステーキング | ・数%〜数十% |
メリット
レンディング |
・安定的なリターン
・通貨の種類が豊富でステーブルコインでも運用可能
|
ステーキング |
・ブロックチェーン上で直接参加可
・リキッド・ステーキングなどで運用効率化
|
リスク
レンディング |
・ハッキングリスク(Dapp)
・カウンターパーティリスク(CEX)
|
ステーキング |
・ロック期間
・スラッシング
|
難易度
レンディング | ・初心者〜上級者 |
ステーキング | ・初心者〜上級者 |
レンディング、ステーキングともに理解しやすい仕組みのため、初心者から上級者まで利用できるでしょう。
レンディング、ステーキングができる主なプロトコルは、以下の通りです。
レンディングの代表的なプロトコルとして下記の2つを紹介します。
AAVEは、代表的なレンディングプロトコルです。イーサリアム(ETH)やポリゴン(MATIC)、アバランチ(AVAX)などのブロックチェーンに対応しています。また、多様なステーブルコインのレンディングが可能です。
Compoundは、AAVEと並ぶ代表的なレンディングプロトコルです。イーサリアム(ETH)やポリゴン(MATIC)、ベース(BASE)、アービトラム(ARB)などのブロックチェーンに対応しています。Compound Ⅱ、Compound Ⅲの2つのバージョンがあり、Ⅱではイーサリアムチェーンの20銘柄、Ⅲではその他のブロックチェーンも含めた7銘柄を取引可能です。
ステーキングの代表的なプロトコルとして下記の2つを紹介します。
Lido Financeは、最大のリキッド・ステーキングプロトコルです。通常のステーキングでは、預け入れた仮想通貨がロックされる一方、リキッド・ステーキングでは、預け入れた仮想通貨と等価のリキッド・ステーキングトークンが付与されます。
ETH、MATIC、SOLでリキッド・ステーキングが可能で、ステーキングすると、stETH、stMATIC、stSOLをもらえます。これらのトークンを使って運用することもできます。
Rocket Poolは、イーサリアムのステーキングサービスを提供するプロトコルです。Rocket Poolでは、以下の2つの方法でステーキングができます。
イーサリアム上でステーキングのノードを運用するには本来32ETHが必要ですが、Rocket Poolを使えば8ETHで可能です。さらに、Rocket Poolの独自仮想通貨RPLも受け取れます。
また、リキッドステーキングで獲得できるrETHは、LidoのstETHと同様に運用してさらなる利回りを得ることも可能です。
初心者の場合、CEX(中央集権型取引所)のサービス利用もおすすめです。例えば、大手取引所Bybit(バイビット)では、レンディングやステーキングを含む、統合的な運用サービスを利用できます。
Bybitの運用サービスは、操作が簡単で管理の手間もほとんどかからず、多様なサービスにアクセスできるのがメリットです。
また、国内の取引所でもレンディングやステーキングへの対応が広がっています。
作成日
:2023.09.08
最終更新
:2024.01.03
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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