作成日
:2021.01.19
2021.08.31 15:33
米国の大手仮想通貨取引所であるKraken(クラーケン)は、米証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】がRipple, Inc.【以下、リップル社と称す】および同社の幹部2人を起訴したことを受け、仮想通貨リップル(Ripple)の取引サービスを一時停止すると発表した。
今回Krakenは、1月29日から米国内のユーザーを対象にリップルの取引サービスを停止することを決定したという。但し、リップルの入出金や保管は引き続き有効となっているのに加え、米国外のユーザーは今まで通りに全ての仮想通貨およびデリバティブ商品を取引することができるようだ。
SECはリップル社が未登録の証券を発行して違法に13億ドルの資金調達を行ったと主張し、CEOのBrad Garlinghouse氏、共同創設者のChris Larsen氏を含めて同社を起訴した。SECとリップル社の法廷闘争が長期化する可能性もあるが、多くの取引所は当局が勝訴して罰則が与えられるリスクを見越し、リップルの上場を廃止している。既にコインベースやBitstamp、OKCoinなどがSECの意向に従って同様の措置を講じているという。
特にKrakenはワイオミング州から特別目的預託機関(Special Purpose Depository Institution)としての銀行憲章を取得するなど、正式なライセンスの獲得によって法令遵守の意識を高めているだけに、同取引所がリップルの取引サービスを停止したことは妥当な判断だったと言えるだろう。
release date 2021.01.19
これまで仮想通貨の法的定義やフレームワークが確立されていなかったこともあり、SECは違法なICO(イニシャルコインオファリング)やそれに準ずる資金調達を積極的に取り締まれずにいた。しかしながら近年、SECはビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)などの主要な仮想通貨が証券に該当するとの見方を明確にし、訴訟も辞さない構えで仮想通貨関連企業への監督を強化しているようだ。例えば、SECは人気のメッセージングアプリを展開するテレグラムのプロジェクトであるTONを証券取引法違反で中止に追い込んでいる。この流れを受け、Polychain Capitalの運用資産が合計3億ドルを突破するなど、仮想通貨市場ではベンチャーキャピタルを介した資金調達が拡大しているという。SECの法的措置は仮想通貨業界のAmazonを目指すリップル社を窮地に追い込むことになったが、米国の仮想通貨市場はどのように変化していくのか、今後もその動きに注目していきたい。
作成日
:2021.01.19
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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