作成日
:2020.12.18
2021.08.31 15:31
今月16日、ドイツ議会がブロックチェーン技術を用いたデジタル証券取引を可能にする法案を可決したことが明らかになった。
報道によると、ドイツ議会はこの新しい法律で紙の証明書による証券取引報告の必要性を排除し、その仕組みを証券集中保管機関(Central Securities Depository, CSD)のブロックチェーンシステムに置き換えることを計画しているという。これに関してドイツの財務大臣であるOlaf Scholz氏は、紙の証明書がノスタルジックな理由で大切だと思う人も居るかもしれないが、いずれデジタル証券に取って代わられると言及している。また、Scholz氏はデジタル証券がコストと管理上の負担を削減すると説明し、ブロックチェーン技術に利点があることを示した。
近年、欧州ではブロックチェーン技術の導入が進んでおり、ドイツの隣国であるスイスはトークン化されたデジタル資産と、既存の通貨システムを統合するProject Helvetiaに注力している。また、欧州中央銀行(European Central Bank, ECB)のChristine Lagarde総裁が、2年から4年以内にデジタルユーロを発行すると発言するなど、中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)立ち上げも現実味を帯びてきている状況だ。
これに対して、ドイツは国家規模のブロックチェーン戦略を推し進めており、金融分野の様々な部分でブロックチェーン技術を取り込んでいる状況だ。最近ではBVDHがEURBを発行を発行した他、Hauck&Aufhäuserが2021年1月に仮想通貨投資ファンドの立ち上げを計画するなど、老舗銀行もこの流れに加わっている。ドイツの法務大臣であるChristine Lambrecht氏は、法律を明確化することでブロックチェーンのような新しいテクノロジーの可能性を高めるとの考えを示しているが、今後も同国での動きに注目していきたい。
release date 2020.12.18
ブロックチェーンは、効率的かつ安全性の高い次世代プラットフォームとしての認識を高めており、世界各国の金融機関で利用され始めている。特に世界的なテクノロジーハブであるイスラエルでは、ISAがデジタル証券取引プラットフォームの利用を促すと同時に、ブロックチェーン技術の採用を進めているという。また、シンガポールのiSTOXは証券をトークン化して取引するためのSTO(セキュリティトークンオファリング)環境を構築し、同国における金融市場の先進化に貢献しているようだ。一方、米国ではSBIも出資するSecuritizeなど、ブロックチェーン関連のスタートアップ企業が台頭してきており、同分野におけるテクノロジー開発が加速している。このようにブロックチェーン技術普及の流れは各所で拡大しているが、各国政府はどのような方針をもって対応するのか、今後もその動向を見守っていきたい。
作成日
:2020.12.18
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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