作成日
:2020.08.07
2021.08.31 15:33
米国・サンフランシスコを拠点とする大手金融機関であるCharles Schwab Corp【以下、チャールズ・シュワブと称す】は、同業のTD Ameritrade(本社:200 South 108th Avenue Omaha, NE 68154
)を260億ドルで買収する計画が、同国司法省反トラスト局(Antitrust Division, Department of Justice)に承認された約2か月後に、両社の取引プラットフォームを統合する計画を発表した。チャールズ・シュワブは同社の取引プラットフォームであるStreetSmart Edge®と、TD Ameritradeのthinkorswim®及びthinkpipes®との統合を、同社の買収完了後18か月から36か月で実施する方針だ。また、チャールズ・シュワブの既存取引ツールに、TD Ameritradeが提供する各種教育ツールや、機関投資家向けポートフォリオリバランスソリューションであるiRebal®も統合する計画である。TD Ameritradeの基幹取引プラットフォームは、先進的なチャートツールやカスタマイズ機能、チャート上からのリアルタイムでの注文執行、為替レートのライブストリーミング、スリッページ管理などを提供している。尚、チャールズ・シュワブの取引ツールを利用するユーザーは、今回の統合において特段の手続きは必要ないという。
取引プラットフォームの統合に際し、チャールズ・シュワブのエグゼクティブバイスプレジデント兼アドバイザーサービス部門ヘッドを務めるBernie Clark氏は、両社のトレーディングチームの経験やスキルに加え、thinkpipesが誇る先進的な取引テクノロジーを融合することで、投資アドバイザー向けに高い競争力を発揮できると述べている。一方でTD Ameritradeによると、新たなウェブターミナルは、既存の取引プラットフォームを補完すると共に、モバイルを利用することでどこからでもサービスの利用が可能になるという。
TD Ameritradeは2009年、ThinkorSwim Groupからthinkorswimを6億600万ドルで買収し、急成長を遂げるオプションや先物取引分野でのプレゼンス拡大を図っている。また、足元では同ツールのウェブ版も投入し、GUI(Graphical User Interface)機能の提供に加え、様々な端末への対応も実現させている。
尚、他の金融サービスプロバイダーの取引プラットフォーム開発動向に目を転じると、Trade360がオンライン取引プラットフォームをリリースしたほか、AGMHがFXSCを投入している。そして今回、チャールズ・シュワブとTD Ameritradeが取引プラットフォームを統合した後、如何なる付加価値ソリューションを提供するのか注目したい。
release date 2020.08.07
米国ブローカレッジ業界では、チャールズ・シュワブとTD Ameritradeに加え、数多くのブローカーが取引手数料を無料とする価格戦争が勃発している。例えばEトレードが取引手数料引き下げ競争に本格参戦したほか、Interactive Brokersや新興勢力のロビンフッド(Robinhood)、レボリュート(Revolut)なども同様のサービスを提供している。ブローカレッジ業界の競争が激化する中において、チャールズ・シュワブはTD Ameritradeを買収する決断を下したことになる。チャールズ・シュワブが手数料無料サービスを断行することは、収益性の悪化に繋がっており、2020年度第2四半期のトレーディング収益が、前年同期比7%減の1億9,300万ドルに減少している。他方で、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックをきっかけに、投資の世界に参入するトレーダーが急増する中、取引高の拡大に成功しているブローカーも散見されている状況だ。チャールズ・シュワブがTD Ameritradeとの買収手続き完了後、富裕層向けのアセットマネジメント業務などにおいて画期的なソリューションを提供し、業績の維持・拡大を図ることを期待したい。
作成日
:2020.08.07
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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