作成日
:2020.08.03
2021.08.31 15:32
カナダのメガバンク5行が、消費者のデータ共有に関して安全性や柔軟性が高く、相互運用が可能な業界標準を確立したオープンバンキングを推進すべく、同国におけるFinancial Data Exchange【以下、FDXと称す】の立ち上げに参画したことが明らかになった。
今回立ち上がったカナダのFDXには、カナダロイヤル銀行(Royal Bank of Canada)とトロント・ドミニオン銀行(TD Bank Group)、スコシア銀行(Scotiabank)傘下のタンジェリン銀行(Tangerine Bank)、モントリオール銀行(Bank of Montreal)、CIBC(Canadian Imperial Bank of Commerce)の大手5行に加え、フィンテック企業やアグリゲーター(データ仲介を行う事業者)やクレジットカード会社など、合計31社が参画している。
カナダは、オープンバンキングの導入に向けたレビューを行っている段階である。同国財務省(Department of Finance Canada)は2018年、金融機関が保有する顧客データに対し、サードパーティーが容易にアクセスできる政策を導入した英国を参考に、導入すべきか否かの調査を行う諮問委員会を立ち上げた。ただし、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを受け、足元では顧客データ保護に加え、プライバシーやセキュリティなどの課題に対応した業界標準の確立に向けたパブリックコンサルテーションが進捗していない状況だ。尚、カナダ銀行協会(Canadian Bankers Association, CBA)は従来、顧客データをサードパーティーへ提供するオープンバンキングは、広範なリスクが高まるとして警戒心を強めていた。
米国では、英国のように政府がイニシアチブを握らず、産業界が主導する形で様々な取り組みが推進している。既に100社以上がFDX APIへ接続し、約1,200万人の消費者が関連サービスを利用しているという。カナダのFDXは、銀行やアグリゲーター、フィンテック企業、決済業者、消費者団体、その他の金融業界関係者など多様な企業の参画を見込んでいる模様だ。FDXのマネージングディレクターを務めるDon Cardinal氏は、カナダのFDX立ち上げは産業界が主導するイニシアチブの成功を意味し、消費者及び事業者の保護とバンキングプロセスの簡素化を図る上で、共通の金融データ共有に関する業界標準の確立に寄与すると述べている。
今回カナダのFDXに参画したメガバンク5行が、顧客の利便性向上に寄与するオープンバンキングを推進し、如何なるソリューションを提供するか注目したい。
release date 2020.08.03
オープンバンキングは、フィンテック企業などのサードパーティーが、APIを活用して金融機関が保有する顧客データへアクセスし、その情報を基に多様なソリューション提供を行う仕組みである。欧州は世界に先駆けてオープンバンキングを推進すべく、決済サービス指令(PSD2)などの規制を整備し、金融機関に対しAPI接続を義務付けた。また、英国は大手金融機関による寡占状態に終止符を打ち、革新的なソリューションを創出すべく、積極的にオープンバンキングを推進している。そのため、欧州及び英国では多くのフィンテック企業が、APIを活用した様々なサービスを展開している状況だ。例えば、チャレンジャーバンクのレボリュートがTrueLayerと連携したオープンバンキングを開始し、アプリ上で複数の外部銀行口座の閲覧を可能としている。その他にも、KapilendoとVarengold Bankが融資制度の電子申請サービスの提供を開始したほか、バークレイズがFXSpotStream向けに流動性供給を開始した。世界各国がオープンバンキングを推進する中、今後も顧客の利便性向上に向けた官民の取り組みが活発化しそうだ。
作成日
:2020.08.03
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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