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米造幣局、硬貨不足に直面

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update 2021.08.31 15:33
米造幣局、硬貨不足に直面

update 2021.08.31 15:33

1セント硬貨は製造コストが通貨価値を上回る状況

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを受け、米国造幣局(United States Mint)が硬貨不足に直面する中、製造に伴い損失が発生している硬貨を廃止し、デジタル通貨を望む声が高まる可能性が出てきている。[1]

米国ではロックダウンに加え、現金の代わりにクレジットもしくはデビットカードでの支払いを推奨するガイドラインが打ち出されたことが、硬貨の供給に甚大な影響を与えているという。また、1セント硬貨の製造コストが通貨の価値を上回っていることに鑑み、同通貨の廃止を求める議論が再燃している状況だ。このような市場環境下において、米国連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)は、硬貨不足への対応を図るタスクフォースを招集している。

英国やオーストラリア、カナダが少額硬貨の製造を停止した他、インドは2016年に2種類の高額紙幣を廃止しているのに対し、米国は硬貨使用削減の面で他国に後れを取っている状況だ。インドでは一時、現金払いが回復していたものの、新型コロナ禍においてデジタル決済が急増している模様であり、米国も同様の事象が起きると見られている。

米国の硬貨の価値は低下傾向にある一方で、製造コストは上昇している。造幣局が公表したレポートによると、1セント硬貨の製造コストは2セントになり、製造される全硬貨数の59%を占めているという。また、同局は2019年度に70億個以上の1セント硬貨を製造し、約7,000万ドルの損失が生じたとのことだ。

硬貨の廃止を求める勢力が盛り上がりを見せる中、反対意見も出てきている。少額硬貨の使用を支持する支援団体のAmericans for Common Centsは、抗菌性の銅メッキ硬貨が新型コロナ禍において適した資産であると共に、仮に価格が99セントでラウンドアップ(切り上げ)された場合、消費者は損失を被ることになると主張している。これに対し、ウェイクフォレスト(Wake Forest)大学経済学部の教授であるRobert Maples氏は、ラウンドアップと同じくらいラウンドダウン(切り下げ)も行われており、消費者にとって損得はない他、硬貨不足は問題を把握する上で良い機会であると述べている。また、ハーバード(Harvard)大学経済学部の教授を務めるN. Gregory Mankiw氏によると、我々が直面している全問題の中で、硬貨不足の解決を図ることは、恐らく最優先事項ではないという。

経済活動の再開に伴う新型コロナウイルスの感染拡大や、過去数十年において最大の景気後退に陥る可能性がある困難な市場環境の中、米国当局が硬貨不足に対して、如何なる対応策を講じるのか注目したい。

release date 2020.08.03

出典元:

ニュースコメント

コロナショックを受けキャッシュレス決済に拍車

製造の度に損失が発生する硬貨の廃止論は、米国のみならず欧州においても根強い。欧州委員会(EC)が2種類の少額硬貨の流通を段階的に廃止する検討に入る中、既にイタリアが2017年に製造を取り止めた他、スウェーデンでは現金を取り扱わないことが一般的となっている。コロナショックの中、民間レベルにおいてもキャッシュレス決済関連ソリューションを強化する企業が散見されている。例えばeToroがMarq Millionsを買収し、強い顧客需要が見込まれるデビットカードの発行を計画している。加えて、各国中央銀行が独自仮想通貨(CBDC)の発行に向けた動きを強めている。例えば、フランス銀行がCBDC向け銀行決済アプリをテストする計画を明らかにし、同通貨を用いた国際決済に関する規制改善に取り組む意向だ。また、日本銀行がCBDC導入の技術的な実現可能性を模索しており、他国の中央銀行や関連機関と協力して導入を検討する方針を示している。今後如何なる通貨流通スキームが構築されるか、各国当局の動静を見守りたい。


Date

作成日

2020.08.03

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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