作成日
:2020.06.16
2021.08.31 15:32
先日、インドでは最高裁判所が国内における仮想通貨取引の自由を認めたが、政府当局が再び仮想通貨を全面的に禁止する法律の導入を検討していることが明らかになった。
今月12日の報道によると、インド財務省は省庁間協議でビットコイン(Bitcoin)など仮想通貨の禁止を提案しており、その内容が閣僚会議を経て審議機関で検討される見通しだという。財務省による提案の詳細は未だ明らかになっていないが、2019年7月に元財務長官のSubhash Garg氏が仮想通貨取引に関与した人物へ330万ドル相当の罰金と最大10年の懲役を課すと明示したことを考えれば、今回の法律も厳しい内容のものになる可能性は高い。また、インド中央銀行(Reserve Bank of India, RBI)はこの件で上訴する構えを見せており、前回の最高裁判所の判決が無効になる可能性も十分にあると言えるだろう。
過去にインド政府は仮想通貨取引の全面禁止を発表しており、国内の仮想通貨市場が壊滅的な状況に陥ったが、最高裁判所がこれを違憲としたことから再び仮想通貨需要が急増しているようだ。特にインドの仮想通貨市場は世界最大級の規模を誇ると考えられているため、国内大手仮想通貨取引所のWazirXを買収したバイナンスや、CoinDCXに投資を行なったPolychain Capitalおよびコインベースなどが本格的な事業展開の機会をうかがっている。しかしながら現状では、仮想通貨に否定的な姿勢を貫く政府当局の方針が潜在的なリスクになっているといえるだろう。
現在、インド政府は中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)に関心を示しているようだが、この政府当局の動きがどのような結果を招くのか、今後も同国での展開を見守っていきたい。
release date 2020.06.16
世界の送金市場はアジアの新興国地域を中心に拡大しており、その手段のひとつとして送金手数料が安価な仮想通貨が利用され始めている。特にフィリピンやベトナムと並んで巨大な送金需要を抱えるインドでは、フェイスブックがWhatsAppで送金可能なステーブルコインの開発に着手するなど、他国に先駆けて新しい動きが生じているようだ。今の所、インド政府は仮想通貨を排除しようと試みているが、国内の仮想通貨コミュニティは以前からP2P(ピア・ツー・ピア)取引などの水面下での活動を継続しており、その取引量は増加の一途をたどっているという。実際に500人の男女を対象に実施された調査では、75%の国民が既に仮想通貨投資を行なっていると回答し、そのほとんどが最高裁判所の判決前(禁止時)に仮想通貨を購入していることが明らかになった。このような現状を考慮すると、インド政府による仮想通貨の全面禁止はあまり効力のない政策になる可能性があるが、今後も国内の仮想通貨市場の動向に注目していきたい。
作成日
:2020.06.16
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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