作成日
:2018.12.21
2021.08.31 15:27
報道によると、Facebook, Inc.(1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025 United States
)【以下、フェイスブックと称す】が、自社メッセンジャーアプリであるWhatsAppでの送金に対応するステーブルコインの開発を進めているという。詳細な内部情報は明らかにされていないものの、フェイスブックは以前から、米ドルに裏付けられたステーブルコインの開発に取り組んでいたようだ。カストディなど資産を管理する戦略を構築しているため、リリースまでにはまだまだ時間がかかる見通しだが、まずは、インド市場でのサービス提供を目指しているという。これは、インドで2億人以上のユーザーを抱えている定番のモバイルメッセージングアプリであるWhatsAppがプラットフォームとなる予定であること、また、インドは2017年に合計690億ドルもの送金額を記録した世界最大の送金市場となっていることが、フェイスブックにとって好都合であるためだと考えられる。
フェイスブックの金融サービス分野への参入は、Paypal Holdings Inc.(本社:2211 North First Street San Jose, California
)の前代表取締役を務めたDavid Marcus氏を組織に引き入れた2014年頃から予測されていた。今年5月には、Marcus氏はフェイスブックのブロックチェーンイニシアチブの責任者に就任している。広報担当者によると、フェイスブックは、他社と同じように、ブロックチェーン技術の有効な活用方法を模索している段階で、チームメンバーは40人ほどとまだ小規模ながら、異なるアプローチでアプリケーションを開発しているという。ステーブルコインのコンセプトは、日常生活でも実利用可能な仮想通貨を作り上げることで、ビットコインなどの従来の仮想通貨よりも価値の安定性が求められる。ここ1年間で、ステーブルコインは一種のブームとなり、今では120ものベンチャー企業が関連するプロジェクトを立ち上げているが、最近ではベーシス(Basis)という有力なステーブルコインプロジェクトが打ち切られていることからも伺えるように、このコンセプトを実現することは非常に難しいのが現状である。ベーシスは、ベンチャーファンドのAndreessen Horowitzや米連邦制度理事会の理事であったKevin Warsh氏など、主要な支援者が手を引いた後、すぐに崩壊している。また、現在、最も成功したステーブルコインと言えるテザーでさえ黒い噂などもあり、その米ドルとの等価性やステーブルコインとしての信頼性が疑問視されている。
フェイスブックは、世界中に25億人のユーザーを有しており、年間の売上は400億ドルにも達している。インドは、フェイスブックにとって中国の次に巨大な市場となっており、4億8,000万人のユーザーを獲得し、更に2022年には、それが7億3,700万人にまで拡大することが予測される。主にWhatsAppで拡散されたフェイクニュースが原因で、度重なる殺人事件が起こったこともあり、インド政府とフェイスブックの関係が緊張状態にあることが懸念点として上げられるが、フェイスブックは、幾多もの規制上の問題を乗り越えた経験もあるため、今までのステーブルコインよりも成功する可能性は高いと言えるだろう。
release date 2018.12.21
インドでは、インド政府が仮想通貨取引所でのインドルピーによる入出金を制限することで、国内での仮想通貨取引を全面的に禁止してきた。それに対して、国内の仮想通貨コミュニティはインド政府の強硬な姿勢に対して声を上げ、取引禁止の撤廃を求める嘆願書への署名を集める運動へと発展している。最終的な判断は、最高裁に委ねられているようだが、未だ、どちらに転ぶかは明確にはなっていない。しかしながら、このような状況下でも、インド国内での仮想通貨取引は未だ継続されており、一部ユーザーの間では、Telegramのメッセージング機能を使った個人間取引が利用されるなど、政府も対応に手を焼いているようだ。今回のフェイスブックが目論む、WhatsAppへの送金機能の実装も、違法取引に利用される可能性があることは否めない。現時点で、仮想通貨や金融サービスは、フェイスブックにとってサイドビジネス規模の取り組みに過ぎないが、本業のSNSにとっては、インド市場は企業の成長を支える重要な役割を持っている。フェイスブックにとって、政府が望まないサービスを展開することで、関係をこじらせることは得策ではないだろう。慎重な舵取りが求められるフェイスブックだが、どのような動きに出るのだろうか。
作成日
:2018.12.21
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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