作成日
:2020.05.14
2022.06.02 14:18
米国・コネチカット州を拠点とする海外FXブローカーであるInteractive Brokers LLC(本社:One Pickwick Plaza, Greenwich, CT 06830 USA
)【以下、Interactive Brokersと称す】は、WTI(West Texas Intermediate)原油先物5月限の清算値がマイナス圏に沈んだことを受け、証拠金不足に陥った顧客に代わって追加証拠金を解消するために負担した一時的な損失が約1億400万ドルとなり、当初想定よりも拡大したことを明らかにした。4月20日に史上初めて原油先物がマイナス価格に転じた際、Interactive Brokersは追加証拠金を解消するために約8,800万ドルの一時的な損失を被ったことを明らかにしていた。同社は原油先物が大幅下落した際、複数の顧客がCME及びICEフューチャーズ・ヨーロッパ(ICE Futures Europe)を通じてロングポジションを保有していたことから、証拠金不足が発生し、顧客に代わって清算機関に追加証拠金を支払わなければならなかったという。尚、原油先物価格がマイナス圏に沈んだことは、売り手が買い手に対し最大1バレル=40ドルを支払った上で原油を売買することを意味する。
Interactive Brokersは、今回の一時的な損失が財務状況に大きな影響を与えることはない見込みだとコメントしている。また、中国のニュースメディアCaixinによると、今回の原油先物取引に関して、中国銀行(Bank of China)の個人投資家が13億ドル超の損失を被ったという。同行は米国当局に対し、市場操作やシステム及びプログラミングの不具合の可能性を調査することを要請した模様だ。
またInteractive Brokersは先月、2020年度第1四半期決算を発表した。純営業収益は5億3,200万ドルと、前年同期の5億5,800万ドルから減少したほか、税引き前利益は3億800万ドルと、前年同期の3億3,900万ドルから減少する軟調な結果に終わった。調整済み純営業収益及び調整済み税引き前利益はそれぞれ5億8,100万ドル、3億5,700万ドルとなり、前年同期の4億6,800万ドル、2億9,100万ドルから減少して着地している。これに加え、同社が7.7%の株式を保有する中国のブローカレッジファームであるTiger Brokers株に関し、時価評価に伴う減損処理として800万ドルを計上したという。前年同期には1億300万ドルの時価評価益を計上していた。更に、グローバル展開するInteractive Brokersは多通貨にわたる手元資金を確保しているが、2020年度第1四半期に発生した為替差損が4,900万ドルの収益下押し要因になったとのことだ。今後、同社が業績の挽回を図る画期的なソリューションを提供することを期待したい。
release date 2020.05.14
Interactive Brokersは原油先物取引に係る多額の損失を計上したほか、2020年度第1四半期決算も軟調な結果に終わった。更に、Interactive Brokersは4か月間でFXファンドが30%減少しており、同社の業績の低迷が長引いている模様だ。Interactive Brokersが拠点とする米国リテールFX市場は拡大局面に入る兆しを示す中、2020年4月にTrading.comが米国でFXブローカーライセンスを取得したほか、IG Groupも約8年ぶりに同国市場に再参入を果たしており、同社を取り巻く市場環境は厳しさを増している。他方で、米国最大のFXブローカーであるForex.comを運営するGAINは、INTLが提示した買収提案に賛同する姿勢を示しており、業界再編機運も高まっている状況だ。Interactive BrokersはFXブローキング業務が低迷するほか、新型コロナウイルス(COVID-19)禍においてウェブサイトが一時ダウンするなど、業務システムの強靭化も急務になっている。同社経営陣が業績の立て直し及び安定したサービスの提供を図るべく、如何なる戦略を打ち出すか注目したい。
作成日
:2020.05.14
最終更新
:2022.06.02
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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