作成日
:2020.02.07
2021.08.31 15:29
ビットコイン(Bitcoin)のライトニングネットワーク(Lightning Network)開発を手がけるLightning Labsが、Lightning Loopと呼ばれる小売業者向けの有料サービスのローンチを前に、シリーズA(ベンチャーキャピタル等が最初に出資する段階)の投資ラウンドで1,000万ドルの資金調達に成功したことが明らかになった。
発表によると、この投資ラウンドには、Lightning Labsの役員に就任したBrian MurrayのCraft Venturesを中心に、Slow Ventures、前ゴールドマンサックスのDavid Heller氏、Electric CapitalのAvichal Garg氏、Ribbit Capitalが参加したという。過去にもLightning Labsは、Twitter(ツイッター)のCEOであるJack Dorsey氏やSquareのJacqueline Reses氏、Litecoin開発者のCharlie Lee氏、PayPalの前COOであるDavid Sacks氏から250万ドルの投資を受けており、2018年にLND(Lightning Network Daemon)と呼ばれるソリューションのベータ版をリリースし、翌年6月にはモバイルベースのウォレットアプリを立ち上げている。
Lightning Labsのソリューションに関してMurray氏は、ビットコインが有効なグローバル通貨として利用されるためには、Visa(ビザ)が銀行のトランザクション処理による負荷を緩和したのと同様に、同ブロックチェーンをタスクから解放して効率的なネットワークを構築する必要があると主張した。今回、Lightning LabsがローンチするLightning Loopは、ビットコインを利用した決済ソリューションであり、小売業者が決済チャネルを効果的に管理できる環境を構築することを目的としている。Lightning Loopの利用者は、「Loop in」機能でウォレットに資金をチャージしてプリペイド式のデビットカードの要領で使用することができるのに加え、「Loop out」機能で資金を受け取ることが可能だという。Lightning Labsは、このトランザクションに少額の手数料を課し、システムを維持しながら、決済チャネルにおける流動性の確保を実現する。
過去2年間でおよそ12社のスタートアップ企業がライトニングネットワーク開発に着手しているが、Lightning Labsは、他の事業者のインフラ提供者となることで差別化を図っているようだ。実際にLightning Labsは、ショッピングアプリのFoldにバックエンドサポートを提供しており、2019年末のショッピングシーズンには約1,600回のトランザクションを処理することに貢献している。Lightning LabsのCEOであるElizabeth Stark氏は、2020年に同社が大規模な決済ソリューションに注力すると明言し、1,500ドル以上の資金を保有できるオプトインチャネル、および分割決済を可能とするAtomic Multi-Path Paymentsの開発を進めることを示唆した。
小売業者以外では仮想通貨取引所を運営するRiver FinancialもLNDを利用しており、同社のCEOであるAlexander Leishman氏は、このLightning Labsの構想に関して、オフチェーンで大量のビットコインを処理できるようになれば、ユーザーエクスペリエンスが向上し、同取引所にとって有益なものになると言及している。これに対してStark氏は、Lightning Labsの最終的な目標は、自動化サービスを有効にするのと同時に、利用者がチャネルの割当てフローを変更する必要なく、システムを正常に動作させることだとのビジョンを語った。
Slow VenturesのJill Carlson氏は、Lightning Labsがビットコインを媒体としたマイクロペイメントや送金インフラ、取引プラットフォームなどの新しいソリューションを実現するための決済チャネルを構築していることを強調した。これに加えMurray氏は、モバイルアプリなどを支えるインフラは、ユーザーデータを収益化するようなサードパーティ企業に依存するのではなく、今後10年でP2P(ピア・ツー・ピア)ベースのシステムに移行すべきだとコメントしている。Lightning Labsは、2021年までにライトニングネットワークを基礎とした金融サービスを開発することを仄めかしているが、今後も同社の取り組みに注目していきたい。
release date 2020.02.07
2017年の仮想通貨ブームを背景に、多くの企業がマイニング事業に参入したが、ビットコインを始めとするPoW(プルーフ・オブ・ワーク)ベースのアルゴリズムを採用する仮想通貨では、マイニングの難易度が飛躍的に上昇しているという。実際に2018年以降は、大手仮想通貨マイニング企業のギガワットが破産保護を申請するなど、マイニングコストの増加が業界全体の課題として顕著化している状況だ。これに対してイーサリアムはムーア・グレイシャーと呼ばれるハードフォークを実施し、アルゴリズムをより効率的なPoS(プルーフ・オブ・ステーク)に移行するまでの対策としている。トランザクション効率を高めた、人気仮想通貨のモネロはアップデートで取引手数料を97%低減することに成功しているが、これらの主要なブロックチェーンが決済ソリューションの基盤として広く利用されるには、更なるパフォーマンスの向上が必須だと言えるだろう。
作成日
:2020.02.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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