作成日
:2019.10.15
2021.08.31 15:29
G7は最新のレポートを発行し、その中でFacebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)のようなステーブルコインが世界経済の脅威になると主張し、急速に進展する仮想通貨市場の現状に警笛を鳴らした。
このレポートは加盟国の中央銀行、国際通貨基金(International Monetary Fund, IMF)、金融安定理事会(Financial Stability Board)【以下、FSBと称す】などが参加するG7の仮想通貨タスクフォースがまとめたものであり、近日中にIMFの会合で各国の財務大臣に提出される予定だという。G7は法務や規制、監視などの問題が全て解決されるまでステーブルコインの運用を避けるべきだとの考えを明確にすると同時に、Facebookのようなステーブルコインの発行者がこれらの懸念に対処したとしても発行が許可されるわけではないと慎重な姿勢を示した。また、このレポートの中では、世界的なステーブルコインの発行者は健全であることに加えて、消費者を保護することを保証し、マネーロンダリング防止(AML)やテロ資金供与(CFT)の撲滅に尽力しなければならないとの議論が展開されている。更にG7は、リブラが市場を独占した場合、信頼が喪失した際には世界的な金融システムの根幹を揺るがす可能性があるとの見解を示した。
FSBの議長を務めるRandal Quarles氏は、この問題に関して次のようにコメントしている。
FSBは既にこの問題へのアプローチを開始しています。世界的な影響をもたらす可能性があるステーブルコインプロジェクトには、最高水準の規制を課し、監督と監視を行わなければなりません。G7の仮想通貨タスクフォースは、ステーブルコインが与える影響に関して精査を進めており、FSBが抱える規制上の問題点についても議論を始めたいと考えています。
Randal Quarles, Chairman of FSB - FSBより引用
今年6月、議長国を務めるフランス当局がG7の仮想通貨タスクフォースを発足し、同国の中央銀行総裁であるFrancois Villeroy de Galhau氏は、イノベーションに適切な規制を課すことで公共の利益を最大化したいとの方針を定めている。しかしながら、Facebookに対する風当たりは確実に強まっており、ペイパルがLibra Associationからの脱退を表明したのに加え、Visaやマスターカードなどの企業もそれに同調する動きを見せているようだ。米国政府もリブラの去就に目を光らせているが、今後もステーブルコインを取り巻く情勢に注目していきたい。
release date 2019.10.15
Facebookが公開したリブラのホワイトペーパーでは、同プロジェクトへの投資に貢献したパートナー企業の連盟であるLibra Associationが主要な決定を行うことが明示されているが、この中央集権型の構造が大きなリスク要因になるとの懸念が高まっている。今回、G7もレポートの中で開発やインフラ整備、マイニングなどの権限がごく少数に集中することが問題だと指摘し、リブラがその運用システムに課題を抱えている事実を強調した。現に中央集権型のステーブルコインとして広く流通するテザー(Tether)も、その準備金の監査方法や監査法人の選定、法定通貨の払い戻しなどでトラブルになっており、時折価格が乱高下する事態に見舞われている状況だ。中国では中国人民銀行によるステーブルコイン開発が加速するなど、政府主導の新しい試みも進んでいるようだが、世界の規制機関はこの動きをどのように見ているのか、今後も仮想通貨市場の動向を見守っていきたい。
作成日
:2019.10.15
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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