作成日
:2019.08.23
2021.08.31 15:30
電子FX市場【以下、eFXと称す】において、アルゴリズムを用いた取引手法が進化を遂げる中、米国大手投資銀行であるJPMorgan Chase & Co.(本社:270 Park Avenue New York, NY 10017
)【以下、JPモルガンチェースと称す】が、機械学習(Machine Learning, ML)を活用した次世代型のアルゴリズム取引ツールであるDNA(Deep Neural Network for Algo Execution)を開発したことが明らかになった。eFX市場の拡大に伴い、機械学習を用いることで、取引スピードの向上を図るなど、業界の勢力図を一変させるような動きがみられ始めている。初期段階のアルゴリズムでは、比較的単純なパラメーターをもとに売買を行うプログラム設計であったが、クオンツをベースとした取引手法の進化により、eFX業界は大きく発展を遂げている状況だ。
シンプルなアルゴリズムから、より洗練された投資戦略へと進化を遂げたことにより、クオンツ取引が多用されると共に、投資家は数学理論に基づくプライシングモデルを積極的に利用するようになった。また、為替トレーダーにとって従来より大きな課題となっていた大口注文時のスリッページを解消し、市場インパクトを軽減するために、注文を小口化することで、より有利なポジションを保有する戦略を用い始めている。そして、最新のアルゴリズムを活用した取引手法としては、大口注文を異なる時間帯に分散させて取引する時間加重平均(Time Weighted Average Price, TWAP)アルゴリズムが挙げられる。また、日中の出来高に応じて大口注文を分割したうえで適当な時間間隔で取引する出来高加重平均(Volume Weighted Average Price, VWAP)アルゴリズムは、より一般的に用いられる手法となっている。現在では、eFX業界の主要リクイディティプロバイダー(流動性供給業者)の顧客が、これらのアルゴリズム取引への関心を高めていることから、金融機関も市場インパクトを軽減させる一連のアルゴリズム取引サービスを強化している状況だ。
そのような市場環境下において、JPモルガンチェースではFX市場の顧客を対象として、DNAを活用したFX取引サービスの提案を行っている。同社のマクロeコマース部門ヘッドを務めるChi Nzelu氏は、DNAには大口注文の市場インパクトを軽減させることを目的として、異なる市場環境における類似データを活用し、最善の取引手法を提案する最適化機能が付帯されているという。また、機械学習の一種である強化学習(Reinforcement Learning)を用いることで、個々の取引パフォーマンスを評価する機能も備わっているとのことだ。JPモルガンチェースは、現状DNAの活用によって既存の取引戦略手法の改善に繋がるケースは限定的であるが、将来的には様々な市場環境に対応したアルゴリズム取引手法の開発を目指すとコメントしている。
加えてJPモルガンチェースは、従来、人間が開発したプログラミングやルールを徹底した取引手法とは大きく異なり、よりロジスティクなアルゴリズム取引を実践すべく、データの相似性に基づく強化学習を活用したDNAを開発したという。これにより、DNAは仮に様々な障害に直面したり、現在用いている投資戦略が有効でなくなったとしても、アルゴリズム自らが市場環境に応じた最適な取引手法を見出すとのことだ。JPモルガンチェースのDNA開発チームの主席ストラテジストであるSam Nian氏によると、DNAを含む人口ニューラルネットワークは、脳機能にみられる特性に類似した数理的モデルであり、複雑な環境においてもモデリングを可能とするという。また、同社の別の主席ストラテジストであるTanya Tang氏は、DNAの強化学習においては、回帰分析や教師あり学習(Supervised Learning)、人間が策定した取引ルールなどに従う代わりにより柔軟性があり、人間のバイアスを取り除いた取引手法を用いることができると説明している。なお、JPモルガンチェースは独自仮想通貨を開発したり、更にJPモルガンチェースはイーサリアム向けプライバシー機能を開発するなど、最先端テクノロジーを活用した画期的なソリューションの提供を試みており、今後も業界の勢力図を一変させるような新商品の開発を期待したい。
release date 2019.08.23
アルゴリズム取引とは、コンピュータープログラムが為替の値動きや出来高などに応じて、自動的に売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す取引手法のことだ。現在では欧米を始め、日本国内の機関投資家の間でも広く普及している。これらの大口注文をこなす機関投資家にとっては、市場において他社以上の運用パフォーマンスをあげるために、いかにして自身の取引が市場に与える影響を抑えるかが非常に重要な課題となっている。そのため、JPモルガンチェースを始めとする多くの金融機関にて、VWAPやTWAP、平均取引価格を終値に近づけるMOC(Market On Close)、市場インパクトと取引タイミングコストを最適化し一定時間内に取引を完了させるIS(Implementation Shortfall)といったアルゴリズム取引手法の開発が積極的に行われると共に、注文のシステム化が図られている状況だ。アルゴリズムを用いた取引手法の一つである高頻度取引(HFT)は、世界一の金融市場である米国において、約定株数ベースで約50%を占めるまでに利用拡大しているほか、2019年の年初に日本円がフラッシュクラッシュした際も、HFTが市場の価格変動を高めたとして、その影響力が拡大していることがうかがえる。今後も、最良執行を目指す機関投資家からの高い需要を背景に、金融機関によるアルゴリズム取引手法の開発競争は激化するものと予想される。
作成日
:2019.08.23
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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